~漂流中~

2017年6月、舌癌になった妻(39)が亡くなった。ADHDではなくASDの息子(6)、頼りない自分(41)を残して…

■舌癌19 東京医科歯科大学病院へ

■漂流番外編



今、引っ越し、小学校入学準備ほか、

新生活に向けての作業がピークを迎えており、

刻々と状況が変化しているため、

番外編として、少しだけ近況報告をしていこうと思います。



引っ越し作業がようやくフェーズ1終了を迎えそうです。

生活必需品の準備が整い、

自炊が出来るようになってきました。

リビングに設置する家具家電もほぼスタンバイとなり、ようやくリビングに置かれているダンボールや、床を隠している荷物の片付けが終わりました。

3月13日現在、
やっとラグが引けて、くつろげる空間が出来ました
_(⌒(_。・ω・)_💕

生活必需品以外の整理はまだ手付かずで、
1部屋はまだダンボールが散乱していますが、

あとは時間掛けてやってけばいいかなって物なので、ようやく息子の小学校入学関連作業に移れます。

まだまだ睡眠時間は毎日3時間…
かれこれ1月からずっとこの生活ですが、
もう暫く睡眠不足は続きそうです(。´Д⊂)






それでは本編に入ります。






2016年7月25日



舌癌再発と診断され、

下顎半分を丸ごと切除される治療法を宣告された妻。



その手術内容、術後経過の想定から、

希望よりも絶望の方が勝ってしまい、

何とか他の可能性はないかと、放射線治療でお世話になった先生に相談した結果、

良い先生、治療法があると紹介された

東京医科歯科大学付属病院、放射線治療

で行っている小線源治療に望みを託すべく、

同病院のY先生を訪ねます。



まだ緩和ケア入院中のため、

外出許可をとり、朝早くから車で移動です。



妻の調子は悪くは無さそうで、
自分で外出準備をして、病院の玄関まで降りてきていました。

早速車に乗り、40分程度の車移動。



調子はまあまあだよ🎵



と言っていた矢先、
車に乗って15分程の所で、突然の吐き気で吐いてしまう。

車酔いは殆どしなかった妻だが、オキシコンチン、オキノームの痛み止め副作用が吐き気を呼ぶらしい。

静かに寝ていればやり過ごせるため、病室で静かにしてるときはコントロール出来るようですが、

起きて活動していたり、乗り物に揺られたりすると、反射的に戻してしまうようです。



ただ、以前にも書いたように、胃腸炎のときのような苦しそうな吐き方とは少し違い、

歯磨きの時にオエッとして、でも吐かない、みたいな感じの反射なのだが、

今の妻の場合、吐いてしまわないと収まらない、吐いてしまえばすぐにスッキリする、

そんな感じらしく。



3分ほど辛そうにしていましたが、
実際には車に酔っている訳ではないため、すぐに調子を取り戻します。



心配して車を止めようとする私をいさめるように、

大丈夫だから、行こう。

と言う妻。



程なく東京医科歯科大学病院へ到着。

妻の経過を記録したDVDを持って、地下の放射線科へ。



放射線科はこちらの病院でもやはり地下にあり、

なんとなく陰鬱な雰囲気を打ち消すように、小児科のような飾りが壁に散りばめられ、

明るい雰囲気作りになっているのは、どの病院も同じような感じなのかもしれませんね。



放射線治療科の受け付けに、主治医から渡されたDVDと手紙を渡し、待合室で待ちます。

暫くして、Y先生自ら診察室から出てきて



🏥xxさん、どうぞーこちらですー

はい こんにちはー

はじめまして。お話聞いていますよ(*^_^*)



と、とてもニコニコと穏やかに話始めます。

(先生の話は🏥マークにしますね)




それに応えるように、こちらからもいきなり病気の話からは入らず、

今入院中の病院の放射線科の先生からY先生を紹介されたこと、

今掛かっている病院の事、

主治医のH先生の事、

H先生は凄く無愛想で、目の前のY先生のようには話してくれないこと(笑 ごめんなさい💦)
それもあって、思っている事をなかなか全部はいつも聞けないこと…



そんな雑談から始めてくれたY先生の気遣いに、診察室の雰囲気がとても柔らかくなります。

しかも、



🏥H先生のこと、よく知ってますよ。知り合いですから(笑)
以前、S大学病院で一緒だったので、そこで一緒に癌治療やってたんですよ。



と。

なんですとΣ(゚Д゚)

H先生そんなこと一言も言ってなかったぞ…



🏥まぁ、あんな感じの先生ですからね(笑)
でも素晴らしい先生ですよ!



なんて、そんな感じで話してくれるものだから、
妻も私も一気に打ち解け、自然と笑顔に。



渡してあったH先生からの手紙をあけて読み始めると、



🏥手紙書いてくれたんですね。(手書き!)
ちゃんとお返事書いて渡しておきますね🎵



なんか、医者どうしの文通みたいですね。

こうして話をしていくうちに、緊張していた心がバラバラにほぐされていく感じ。

これから命の話をしようという人たちを笑顔にする力。

話し方、笑顔、気遣い、ユーモア…
そのすべてが、人を明るい気持ちにさせる、なんとも言えない心地よさ。

妻も、Y先生と話をするのが楽しそうだ。

初対面の初めの5分で、これ程までに人を引き付ける力のある人はなかなかいないと思います。

直感的に、この先生は頼れる、悩みを相談できる、と感じました。






そしていよいよ診察が始まります。



🏥ちょっと口の中見るねー
ごめんね、ちょっと触るね。



妻が ぎゅうっっ と目をつぶります。

舌を指で摘ままれたり、

舌の裏側を押されたり、

窪みが大きくなってきている口腔底を触られたり…



ぼろっ と大粒の涙が1粒溢れます…



🏥ごめんね、痛かったね。もうしないからね。



妻は、目をぱちぱちさせながら、

痛かったー(>_<)💦
でも大丈夫(ノω・、)

と無言で応えます。



しかしここで状況が一変。



主治医から渡されたDVDのCT画像なども見ながら

Y先生が険しい表情で話始めます…



🏥今触った感じと、画像で見る限りだと、
舌の切除部分から少し奥に向かって、口腔底のえぐれてる部分、舌根あたりが再発箇所で間違いないと思います。

まだ触った感じでしかないけど、
少し大きい。



私は少し長く目を閉じ、次の言葉を待ちます…



🏥画像で見ても、このあたりが…大体2㎝を越えている。

舌よりも、口腔底の方に広がっていて、
少しモヤモヤした部分が下の歯の根本と、顎骨との境目辺りの骨膜(骨を覆っている頑丈な膜)の所で広がっていて…
多分、骨膜には浸潤していない感じで塞き止められているような感じに見えます。

小線源治療というのは、舌に出来た比較的小さな、1~2㎝程度までの癌に良成績がありますが、2㎝以上になると思うように効果が出ない可能性があります。

また、舌から口腔底にも広がっていますから、口腔底の方まで十分な効果を出すことが難しいかもしれない。


………



この前の、主治医のH先生から顎切除の話をされた時と同じ絶望感が身体中に駆け巡る。



この治療は、

ここへ来たのは、

妻の病気を、命を救う唯一の方法だったはずだから…



妻はただ黙って話を聞いている。



難しい、と言われ、
あぁ、そうですか。
と、話を聞き入れられるわけが無い。



無理であったとしても、
諦めて帰るなんて出来るわけないじゃないですか。



私から話を続けます。



👨難しいこと、通常は適用外の腫瘍サイズだということを前提として、それでもこの治療を受けたい、とした場合、何か方法は考えられますか?



先生は、厳しい表情で、
しかし優しい口調で答えます。



🏥舌癌への小線源治療というのは、放射線を出す金属の針や、粒型のものを舌に差し込んで、1週間くらいか、粒の場合はそのままずっと留置するという治療をします。

一般的には、M字型をしたホッチキスの針の、両方の先端部分を伸ばしたような、4~5㎝くらいの長さのものを使うことが多いです。

その針の周りに放射線が出ていて、体の中からとても狭い範囲に対して、ピンポイントで放射線治療をする感じです。

放射線の当たる範囲、どの位置に何グレイ当たるかは、針の差し込む位置、本数、向きも含め、コンピュータで厳密に計算されています。

通常は2針 (舌に刺さる部分としては4針分) で治療を行うのが一般的で、実績も十分あります。

しかし、この大きさ、口腔底までの縦の長さ、下の広がりを考えると、多分針を追加しないと足りないんじゃないかと思います。

当然針を増やせば副作用の心配も大きくなります。口内炎も強く出ると思いますし、顎骨にも近いので、放射線性骨髄炎や顎骨壊死も気になります。

過去の治療成績から見ても…
うん、難しいですね。

通常、癌を倒す放射線量となると70グレイくらいは考えます。
当然、小線源でもそれくらいは当てていく事になりますが、顎骨への副作用は60~80グレイあたりから影響が出てくる事が多いです。

その副作用から顎を保護するために、舌と歯の間に入れるスペーサーを作成し、放射線が歯や顎骨の方まで行かないようにするのですが、

今回は、口腔底の顎骨の際まで癌が広がっているため、針は舌だけでなく、口腔底まで深く入れる事になる。

口腔底の方まで入った針からの放射線はスペーサーでは防ぎきれないし、むしろ顎骨のぎりぎりまで放射線を届かせなければならないため、副作用のコントロールが大変難しい。

(実は、小線源治療はその昔、治療した殆どの人たちに顎骨壊死を起こし、癌が治ってもこれでは使い物にならないと言われてきた時代があるようです。そこで、放射線を遮るスペーサーを治療中ずっと口に入れておく事で、その件数を大幅に減少させ、ようやく有効な治療法として確立したという事です。)

しかも、xxさんは、すでに頚部への放射線治療もやってるので、きっと顎付近に30~40グレイは当たってると思った方がいいので…

癌を倒す分放射線を当てたら、ちょっと当たりすぎかな…当然当てる量はコントロールするのですが、それで癌が残っちゃうなら治療の意味が無いですからね…

このあたりがとても難しい所です。

あと、もしやること前提で話をするのであれば、抗がん剤も併用した方がいいでしょう。とはいっても、小線源治療を最短で行う事を優先しますので、通いでも出来るTS-1がいいかと思います。

やらないよりはマシという程度ですが、少しでも小さく、進行を遅らせられたらいいという感じです。
強いのをやって体調が整わずに小線源治療出来ないのでは本末転倒ですからね。

ただ、どうしてもこのサイズの腫瘍ですので、経験上…うーん、と言わざるを得ないのが正直な所です。
申し訳ない。



つまり、

治療自体が出来ないという事ではないが、

もし小線源治療をやったとしても、

癌の大きさと、

今までに受けてきた放射線治療の影響により、

十分な治療効果を出すことが難しいのではないか?

という…



やるべきではない…?

でも、そうしたら、
切除手術という手は残っているが、
何より、妻は全ての希望を失ってしまう。



横を見ると、
妻がボロボロと大粒の涙を溢れさせている…
が、目は先生をまっすぐに見たままだ。

自分も、胸を締め上げられたように息が苦しくなる。



単純に小線源治療を受けるだけでは、十分な治療効果を得られない事はわかった。

では、何をクリアにすれば、
何を妥協すれば、
何を受け入れれば、
何に対処すれば、
本来の治療成績に少しでも近づけられるのか?

まずは可能な限りの情報を集めます。



👨もし、骨髄炎を起こした場合の対処はあるのですか?



🏥程度にもよりますが、骨が腐り、膿のように排出されたり、骨が剥がれて、剥がれた部分が膿と共に皮膚の外に出てきたりします。

放射線性の場合、病気という事ではなく、中から組織が壊れていってしまいますから、根本的な治療法が無く、とにかく膿を綺麗に洗って、消毒して、自然治癒を促すしかないんです。

収まっていく人もいれば、治らない人もいます。
痛みがひどい場合は、顎骨を切除しなければおさまりません。

また、総被爆量が高くなってしまった時の副作用は、顎骨影響だけでなく、敗血症や、放射線性潰瘍もある。
潰瘍の拡大により、頚動脈欠損、失血死という事もあります。



👨膿が出てきたり、骨が剥がれて出てきたりするっていうのは、どこからですか?口の中ですか?顎の下の皮膚のところからですか?



🏥大抵は口の中ですよ。
抜歯や、歯茎の掻爬(そうは)に近い手術になります。

ただ、なかなか治まらずに何度もになったり、その治療が原因で逆に顎骨壊死になったりもするので、普通の歯医者では治療しない方がいいです。
必ずうちの口腔外科に相談してください。



👨もし、小線源をやった後に再再発や、癌の残りがあった場合、どんな治療法がありますか?



🏥小線源治療後の再発の場合、やるとすればH先生の言う通り切除手術ですが、出来るかどうかはわかりません。

放射線を当てている範囲は、組織が、特に血管が脆くなっていて、切って縫合しても血流が足りずに傷が癒え難くなります。

傷が塞がらなければ致命傷になってしまうため、もし切るのであれば放射線を当てた範囲を丸ごと切除しなければなりません。

もし手術が出来たとしても、舌全摘出、口腔底全摘出、右側顎骨の切除摘出くらいの大変厳しい治療になる筈です。



👨何もせず、癌を放置した場合は…どうなりますか。



🏥まあ…
まだ可能性を求めて治療していくのですから、あまり言いたくは無いですし、正直どうなるかはわかりませんが、

腫瘍拡大による、
食事不可、呼吸不可、動脈欠損、などが考えられます。
あとは、抗がん剤治療などがどう作用するかですね。



いま残されている治療法

今後の経過

対処していかなければならないこと

出来ることと

出来ないこと…



すべての条件を机の上に並べ、
起きて欲しくない事が起きてしまわないよう、頭をフル回転させます。



しかし、答えがまとまるよりも早く、



👩副作用とか、骨髄炎とか、そんななるかどうかも分からない事なんて気にせず、小線源治療やってほしいです。
もし、副作用が出たって、骨が腐ったって、癌がなくなるならそれでいいです。
これが最後の希望なんです…!
Y先生になら命を預けてもいいと思っています。
どうか、お願いします…m(__)m



妻の、この言葉を口にする時の気持ち、

自分の命に本当に終わりが来るかもしれない尋常ではない不安、

それを他人に言う度胸、

言わなければならない、言わなければ本当に終わってしまうという現実、

いま、この瞬間がその時だ!という覚悟…



私も、妻と同じ気持ちでここに来たこと、
他に望みが、希望が無いことを先生に伝え、



👨どうか、妻の命を救って下さい…お願いします!お願いしますm(__)m



と、切に頼みます。



Y先生は、

この無理なお願い、リスクの高い治療に、
ひとつも嫌な顔をせず



🏥わかりました(*^_^*)

ただ、

いまここで結論を出さず、2~3日よく考えて、ご家族ともよく相談されてから正式に返事を下さい。
もしやるとなれば、私も全力を尽くします。

返事は今日でも3日後でも、最短の手術日は8月17日で行きましょう。返事があるまで仮予約を入れておきますから。

また、

放射線技師として、
本来お勧め出来ない小線源治療以外の治療法で、当たってみてはどうか、というものをお伝えしておきます。

こちらも優れた治療法で、選択的動注科学療法というものです。

血管にカテーテル挿入し、癌へと繋がる血管に直接抗がん剤を注入し、かつ、全身に中和剤を流すことで副作用も抑えながら治療するというものです。
ただ、抗がん剤だけでなく、放射線も併用する治療ですので、今の xx さんに適用できるかどうかは聞いてみないとわからないですが…



超選択的動注科学療法
J-Stage
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrhi/48/1/48_1_73/_pdf



関東近辺では以下の病院で受けられます。



動注科学療法 南東北がん陽子線治療センター
http://www.southerntohoku-proton.com/sp/indication/efforts.html

動注科学療法 横浜市立大学付属病院
http://www.ycu-oms.jp/superselective.html

動注科学療法 国立がん研究センター東病院
http://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/head_neck_surgery.html

動注科学療法 がん研有明
http://www.jfcr.or.jp/cancer/type/headneck/index.html



🏥動注科学療法は以前からある治療法ですが、以前は頭頚部全体に抗がん剤を流す辺りまでしかカテーテルが入れられなかったんです。

それが最近になって(2016年当時)顎や舌根の方まで入れることが出来るようになったので、口腔癌にも十分使えるようになったんですよ。



なるほど。

新しい治療法の話、全てをメモに取ります。



最終回答は2日後くらいにします、と伝え、
7月25日の小線源治療をやりたいと伝える事前提のセカンドオピニオンは、一旦これで終わりとなりました。



1時間強の診察、話し合いでしたが、
これからの方向性、治療方針が見えた良い機会となりました。



動注科学療法は、後日各病院へ連絡し、
前向きに相談出来るか、治療までに掛かる期間はどの程度か聞きましたが、

やはり、一度頚部へ放射線を当てている場合、適用が難しく、来院して検査等していくなかで、いけるかどうかを判断することになるというのが基本的な答え。

また治療開始までに掛かる日数が1ヶ月以上は掛かるだろう、という想定。

この時間の掛かり方と、検査をしても適用外の可能性があることから、無駄な時間を過ごしたくないと思い、方針から除外しました。



東京医科歯科大学病院からの帰り道、

妻が私に確認してきます。



👩小線源やろうよ。やるんでしょ?



👨リスクがある事をしっかり教えてくれたけど、どう思う?



👩私、あの先生に診て貰いたい。
あの先生なら命を預けてもいい。



こんな時に不謹慎ですが、
ちいさなヤキモチが…f(^_^;

でも、妻にそこまで言わせる先生を尊敬します。
私も、まだ治療について何もしていないのでこの時は評価のしようもありませんでしたが、
今現在でも、Y先生を尊敬しています。感謝しています。



👨うん、良い先生だと思う。自分も信頼してる。



👩家で相談はするけど、私は小線源やるつもり。ダメだったら全部切っちゃえばいいよ。



いやいやいや、そんな簡単に…
ほんとド根性妻。



後日、Y先生に気持ちを伝え、

6日後の8月1日から転入院、

TS-1の服用を開始しつつ、

8月17日の小線源治療に向けて準備を進めていく事になります。