~漂流中~

2017年6月、舌癌になった妻(39)が亡くなった。ADHDの息子(6)、頼りない自分(41)を残して…

■舌癌25 手術③ 左頚部癌転移リンパ切除手術

2016年11月



息子が生まれた時からの夢、

七五三はディズニーでやりたい。



舌癌になり、

何度となく辛さ、苦痛に立ち向かい、

それでもこの夢に向けて調整をしてきた妻。



念願叶い、11月頭にこの夢を叶える事が出来ます。



ただし、治療の入院の合間を縫って…






ひとつの夢、目標を達成し、

病院に戻ることになった妻を待っているのは

もう1週間後に控えた次の手術、

左頚部の癌転移が認められたリンパ節の切除手術です。






2016年11月9日



左頚部のリンパ切除手術当日。

小線源治療後の短期副作用経過観察中に発見された

左頚部、耳の下あたりのリンパ節肥大の切除手術。



大きな両開きの無機質な自動ドアの向こうへ

自ら歩いて入っていく妻の小さな背中を見守りながら、



いい加減、妻を解放してやってくれ…!

頼むから、生きて返して欲しい…



と、神様なのか、何なのか、

運命を決めている絶対的な何かに向かって祈ります。



手術は、8時30分~12時30分。

とりとめも無く癌治療の事を調べていると

4時間という時間はあっという間に経過しました。



腫瘍と思われるしこりは、

事前の画像検査に映ってこなかったものも含め

5つを切除。



周辺組織も、肩の神経も切除したが、

静脈や、その他神経など重要な組織は残せたため、

気管切開や経管挿入などは無し。



少し広い範囲での切除にはなったが、

結果は想定の中でも上々。

良かった!



完全に取るべきものは取りきったが、

それでも万が一、

今の残りの組織に再発があったら、

切除での処置はもう難しい、とはっきり言われた。

が、局所再発で早期に発見されれば、

サイバーナイフなどはまだ出来るとも。



顎下に現れた変色した組織変異は、

放射線の重度被爆による副作用によるものと考えられ、

もし化膿してしまっても綺麗に洗浄していけば、

時間は掛かるが治るだろう、

という判断を術後に頂いたが、

特に何か検査をしたという訳でもなく、

にわかには信じることが出来なかった。



しかし、術後状態としては悪くなく、

痛みのコントロールも出来て、

食べられる状態になるなら、

退院する方向でやっていきましょう、と。



全身麻酔から目を覚ました妻に寄り添い、

術後の辛さを緩和出来るよう介護します。

今回の術後はだいぶ調子が良いようで、

ICU等での看護も必要なく、

痛みや苦しさ、吐き気などを訴える事も無く、

寝返りをうちたいときに頭、首を支えてあげるくらいで

落ち着いた状態を保っています。



体の暑さは、手術後は毎回強く出るようで、

体をゆっくりとしか動かせないなか、

しきりに布団を足で押しのけて、

うちわで扇いで欲しいと、

手をパタパタやって訴えてきます。



髪の毛をおでこに張り付かせている汗を拭い、

パタパタと優しい風を送ります。

妻から、ちいさな掠れた声で

ありがとう

と一瞬の笑顔を送られます。



そして、

身の置きどころが決まってきたところで

ようやく手術が無事に終わったことを妻に伝えます。



窓の外に走る電車に赤い光が反射し始めたころには、

静かな寝息をたてて寝ることが出来ていました。






11月11日



術後経過としては順調だが、

手術による影響で顔がパンパンに浮腫んでしまう。



これは、手術前にも言われていた事で、

両頚のリンパ節を取ってしまえば、

頭頸部の老廃物を流す先が無くなってしまうため、

特に術後暫くは顔全体が浮腫みやすくなる。




想定はされていたので対処も早く、

ステロイドの点滴により徐々に浮腫は収まっていくが、

落ち着くまでに数日は要する。



本人的には、息が苦しいのが辛いところ。

よく体を休め、暫く様子見となる。



ただ、食欲は戻ってきているようで、

ちょうどこの時発売され始めた

スタバのプリンが食べたい!

と連絡がԅ(,,´﹃`,,*ԅ)



スタバのプリン
https://halleluja.jp/29473/amp

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(写真は上記ブログからの転載です)



食欲は元気のバロメーター!

早速明日買っていきます!






11月12日



朝一でスタバプリンをゲット!

お見舞いに行きます。



顔の浮腫が少し引いてきた。

調子も上向きで、食欲もあり

一緒にスタバのプリンを一緒に食べる事が出来た!

今回の術後経過は良い感じかも(゜▽゜*)



部屋を見に来た看護婦さんみんなに、

何これ!?こんなのあるんだ!

と珍しがられ、二人揃って無邪気に自慢する(笑)






11月13日



妻の経過が安定していることから、

この日は息子と遊び、夜に息子と病院へお見舞いへ。



普段の平日、息子は妻実家にいましたので、

お見舞いには妻両親と来ていました。

自分と息子とでお見舞いにくるのは珍しい。



夜遅くなってしまいましたが、

病院に行くと、妻が1階まで降りてきて

待っていてくれた!



ビックリ(◎-◎;)!



4日前には、左頚をガッツリ切っており、

2日は寝たまま、痛みで1人では寝返りもうてず。

昨日はベッドの背もたれを立てて起きれましたが、

まだまだ介助が必要。



それが、手術から4日目。

自分で歩いてエレベーターに乗り、

誰もいない待合場所まで歩いてくる事が出来た!



首にはまだホチキスで止められている大きな切り傷が。

それ、切れてるよね!?((((;゚Д゚)))))))



包帯やガーゼ等で傷を覆ったりはしていません。

恐らく傷に張り付いて、

剥がす時にまた傷が広がってしまうのを

防ぐためと思われます。



誰もいない病院の廊下を走り回って

1人楽しむ息子を妻が呼び寄せ、

椅子に座ったまま優しく息子を抱っこする。



息子にも傷を躊躇無く見せる。

息子は少し驚いていましたが、

次の瞬間には、



さわってもいい?



と、妻の傷をそっと撫でていきます。



お母さん、大変だけど

また一緒に遊びたいから、

頑張って、治して、必ず帰るからね。

待っててね、と。



息子は、特性ゆえか、

自分以外のあらゆるものに対しての感受性が弱いのか、

痛そうな傷を見ても、

辛そうに見える妻の状態を見ても、

それに感化されて、一緒に辛そうにしたり、

可哀想だと思ったりすることはあまりなく、

常にマイペースで元気いっぱいに振る舞うため、

逆に辛い立場の人間からすれば

ものすごく沢山の元気を貰えるような、

とても嬉しい、楽しい気持ちになります。



得意、不得意は一長一短。

相手に感化、同調されやすければ

相手を心配することが出来る反面、

元気を振りまくことが苦手。

しかし、息子のようにその逆の特性であれば、

相手の気持ちを受けるのではなく、

相手に元気を、想いを伝えられる。



自分は感化されやすい人間なので、

自分には無い特技だな、

人の気持ちがわからない、ではなく、

人に元気をあげることが出来るね!

と、感じた瞬間でもありました。



頑張ろうな。

希望を最後まで繋げていこう。



そう妻に伝えて、息子と共に病院を後にします。






11月14日



夜、体を横にしているせいか、

朝方は顔と首が浮腫んでしまうが、

ステロイドでコントロール出来ているとのこと。



痛みも少なく、

食事も今まで以上に食べられている。

舌の痛みが良くなっているようで、

ヤクルトがしみなくなったとのこと!



今回は、本当に術後経過の回復が早い。

組織の回復が早いととても安心する。

何よりも食欲が出てきている事が何よりも嬉しい♪



また、以前から延々と悩まされていた

舌から右奥歯、右耳へ抜けるような放散痛も減り、

痛み止めを飲む時間になっても痛みが少ないらしい。



これらの変化がどういう事なのか、

しっかりと様子を見ていかなければならないが、

痛みが無くなるのは良い経過だと思いたい。



顎下の黒ずんだ病変部の状態は、

ここ数日あまり変化は無いように見える。






11月17日



抜針。

左頚の切除部のホッチキスを抜いた。

手術から8日後。



小線源治療後、ようやく食欲も戻り

友達にも会いたい気持ちが出てきた妻。

2日後に久しぶりに友人に会う予定を調整します。



また、妻から

キルフェボンのタルトケーキが食べたい!

とご所望(゜▽゜*)

食欲が戻ることは何よりも嬉しい!!



キルフェボン
http://www.quil-fait-bon.com/



ティラミス
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モンブラン
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さつまいものタルト
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(こちらの写真もキルフェボン本家サイトから拝借したものを妻がLINEで送ってきたものです)



妻の好きな物満載(笑)

似たようなタルト3つですよね。

妻が食べたいと言うものなら何でも買っていきますよ!






11月19日



朝からキルフェボンのケーキタルトを買い、

病院へ向かいます。



昼から病室でケーキパーティ!



看護婦さんに見られようがお構い無し!

2人で病室のベッドの所で

ケーキを広げてムシャムシャΨ( ̄∇ ̄)Ψ



ディズニーに行った頃から、

食欲がだいぶ回復しており、

顔つきも以前のようにふっくらしてきました。

途中手術で調子が落ちていた時期もありましたが、

今回は早く乗り越えられそうです。



夕方から来る友人を出迎え、

夜も楽しく過ごします。

久しぶりに友人に会い、元気をたっぷり充電!






11月22~23日



東京医科歯科大学の小線源治療後の定期検診があり、

そのための外出に合わせて外泊許可を取り、

息子は妻実家に預けたまま、

夜は妻と二人で家で過ごす。



東京医科歯科大学のY先生は

変わらず妻を笑顔で迎えてくれる。



が、妻の左頚を見てビックリ!



🏥反対側も切ったんだ!?

そうかー…大変だったね。

リンパ転移しちゃってた?



👩はい。



🏥舌癌って、

体の正中線(体の中心に縦線を引いたライン)を超えて

反対側に出るのってあまり無いんですよ。

でも、もう取っちゃったんだもんね。

そうですか…頑張ったね。



妻は、手術後で顔も浮腫んでおり、

以前のようなイキイキとした表情ではいられなかったが、

やっぱりY先生に会えて嬉しかったんだろう。



先日のディズニー七五三に行けたのは、

Y先生に出会い、小線源治療を受けることが出来たから。

もし顎を切っていたら、もう外には出られなかっただろう。

本当に先生に感謝しています。



まだ治療は続きそうだけど、

Y先生の治療で治療で夢を叶える事が出来たのだから、

これからの治療も頑張って、

元気になった姿をまたY先生に見せたい。



そんな気持ちを、妻と一緒に先生に話しました。



🏥小線源治療後の経過としては、

口内炎や炎症がようやく収まってきて、

舌も柔らかく、

壊死が収まってきているかもしれません。

顎下の黒く変色した部分は…

浸出液とか出てきませんか?

顎の骨は痛くない?



と、とても気にしていた。

やはり、顎骨壊死の前兆…というか、

既に部分的に壊死していて、

その膿を出そうとしているという事か…?



妻は、骨は痛くない。

と言っていたが、

実は気になる事はあったらしく…

でもY先生には言わなかった事を、後日知ります。



Y先生は、穏やかに、冷静に妻に伝えました。



🏥まずは、顎下の変色部を主治医によく調べてもらって下さい。

口腔内の状態は決して悪くはありません。

喉の炎症も落ち着いてきている。

食べられるようになったのが何よりもの証拠。

今後も経過観察は1ヶ月置きに続けて行きましょう。



最後に、私からも1つ確認を。



👦もし、顎下の病変部が癌だったとして、

Y先生が考える、良い治療法はありますでしょうか?



🏥主治医のH先生が以前に言われている通り、

右下顎の切除と、

舌のほぼ全摘出、

と言うことになるでしょう。

大変厳しい大手術になると思います。

あとは、抗癌剤で少しでも小さくなるか…



👦そうですか…わかりました。



🏥とにかく、今は体力を付けましょう。

これから抗癌剤治療も始まると思います。

いっぱい食べて、体重増やさないとね。



👩今日、外泊許可取っていて、

これから家に戻るんです。

美味しいものいっぱいたべよー💕



そんな話をして、

1ヶ月後の再会をY先生と約束し、

病院を後にします。






👩今日は美味しいものが沢山食べたい!



👦わかった!何でも好きな物食べに行こう!



👩つばめグリル行こうよ。



つばめグリル
https://www.tsubame-grill.co.jp/



👦マジで?いけるの!?



👩いけるでしょ(笑)



久しぶりのこのノリ(笑)

なんか元気だった頃の妻が帰ってきた気がした!



帰りがけ、つばめグリルに寄り

ハンブルグステーキ
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トマトのファルシーサラダを。
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(こちらの写真もつばめグリル本家サイトから拝借したものです)



あの有名な、銀紙をナイフで切り開いて食べるハンブルグステーキです。

トマトのサラダは、信じられないほど美味いトマト🍅!



どの料理も、

一番美味いと想像する味の二回りくらいは上を行く味!



妻も、久しぶりの美味しいハンバーグを

目をつぶり、噛み締めるように味わう。

美味しそうにご飯を食べてる人を見るのって本当に癒されます💖



続けて、

夜は、自宅近くの 炭火焼きの魚 を出してくれる

我が家通称 "おじさんの魚屋" のウナギを。

スタミナつけないとね!

妻も、美味しい、美味しいと、

だいぶしっかりと食べることが出来ていました。



このおじさんの魚屋、本当に美味くて、

店が出来た時からずっとファンなんです。

ここの鯖の焼き魚があれば、茶碗3杯のご飯がいけます。

店の名前、場所は言えませんが、

2018年のつい最近、テレビでも紹介され、

先日久しぶりにおじさんに会いに行った時は、



あー テレビ写っちゃいましたね…

先週は忙しくてヤバかったんスよ。

なんか、写真撮っていく人がいっぱいいて。



と、困惑しつつも嬉しい悲鳴を上げていました。

いつものように、焼き台から立ちのぼる

真っ白な煙にまみれながら。



ほんと、初めて通り掛かる方は、

火事かな!?と思うほど、

小さなお店からモクモクと煙が吹き出しています(゜ロ゜;

本当に家事にならないように気を付けて、

また美味しい魚、焼いてくださいね!



そして翌日は、

妻両親の結婚記念日ということで、

柴又の某有名洋菓子屋さんでケーキを買い、

妻実家で、息子も一緒にまたケーキパーティ(笑)

妻も、家に帰れる大切な日を

息子と共にしっかりと噛み締めます。



そして、病院への帰り際、

また妻から離れない息子を何とか納得させ、

じゃあね、

またね、

必ず帰ってくるからね、

と、何度も別れを惜しんで、実家を後にします。






これが、

3回目の手術(小線源治療を含めば4回目)の手術と、

その後の経過、

小線源の副作用もようやく落ち着き、

食べることが出来るようになった頃の、

妻らしく、元気に楽しく過ごそう!

という気持ちに満ちている頃の経過です。



妻の気持ちが前向きになった瞬間に、

自分の気持ちも一気に前向きになりますね。



妻と息子はよく似ていて、

周りの人に元気を振りまく事が出来る人でした。

一見、空気読まないなー

と感じることもあったかもしれませんが、

それは、周りに感化されることなく

自分から楽しく、元気に、を

振り撒いていた事の証でもあったと思います。



以前を思い出し、

その時の事を書き綴ると、

空気を読んで感化される人よりも、

空気読まねぇなぁと煙たがられる人の方が、

最終的には人から好かれ、

そこに居て欲しい人になっていく気がします。






そんな妻のいつもの姿を見れたのも束の間。



翌日 11月24日



手術をしてからたったの15日後。



まだ今回の手術の傷も十分に癒えぬこのタイミングで、



主治医の先生からの信じたくない話と、



まだ主治医さえ気付いていない



新たな癌の猛威が、



幸せを取り戻そうとする私たちに



容赦なく襲い掛かります…