~漂流中~

2017年6月、舌癌になった妻(39)が亡くなった。ADHDの息子(6)、頼りない自分(41)を残して…

■舌癌26 覚悟

2016年11月24日



前回お伝えしている、

左頚部リンパ節切除手術から15日が経過した

冬の匂いを感じる寒い日。



この日、例年よりもだいぶ早く

東京に雪が降りました。






いつもなら、

毎年スノーボードに行っている妻と

_|\○_  ε== \_○ノ   ヒャッフー!!

と小躍りして喜んでいる筈ですが、

この時はそれも叶わず…



しかし、LINEの画面に

雪がはらはらと降ってきたのを見て、

少し嬉しいような、

少し悲しいような、

来年は、一緒に雪見れるかな…

見れるよね?

きっと、旅行にも行けるよね?

という気持ちで、

2人違う場所で、

同じLINE画面を見ていた事を思い出します。






🧑寒くなってきたけど、痛みとかはどう?
痛み止めの薬とかは以前と変わらず?



👩今はこんな感じだよ。

オキシコンチン
  6:00 20mg
 14:00 20mg
 22:00 80mg
オキノーム散
 4時間半空けて 60mg



🧑オキノームは1時間空けて飲んでもいい10mmだったよね?痛みは小線源の頃に比べれば落ち着いてるって言ってたけと、前より薬増えてるよね…






言わずも、

そうだよな… 

と感じる病気の進行状況。

きっと、今の痛みに対しては、この薬のバランスが一番疼痛を感じにくい処方なのでしょう。






🧑前、オキシコンチン飲んでた時は吐き気があったけど、今は大丈夫なんだ?



👩今は吐き気ぜんせんないねぇ。






医療用麻薬は、

体が馴れないうちと、使いすぎている時には、

吐き気や強い眠気に襲われるが、

痛みと拮抗している時と、必要量であれば、

副作用が殆ど無いと、緩和ケアの先生から聞きました。

しくみや、原理はわかりませんが。






主治医のH先生による、

左頚部リンパ節切除手術の術後報告。



リンパ組織で取った部分は5個。

うち、画像で見えていた1つと、
もうひとつ見つかった固い部分から、
転移で間違いない結果。

他の取った所からはガンは見つからず、
炎症後の組織みたいなものがあっただけだった。

2つの転移のうち、1つは節外浸潤していて、
周囲の組織に少し染み出していた。
これがどこまで広がっていたのかは判断出来ず。

その周囲組織も含めて切除しているので、
悪いものは取りきっているという判断ではありますが、
このケースの場合、術後放射線治療が必須です。

しかし、以前の右頚部リンパ節切除の際にも
放射線治療を行っており、

小線源治療も行っているため、
もう放射線は掛けられないという判断に。

少しでも再発の可能性、
進行を遅らせる、という効果を狙って、
抗癌剤治療を、まずは1年継続して
様子を見ましょう、という事に。

取り急ぎ開始出来る抗癌剤
まずは TS-1 を明日 11月25日から開始。

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今回は東京医科歯科大学病院のように粉タイプではなく
錠剤しかないとのこと。

錠剤は飲みにくく、舌の底の穴に落ちやすいため、
出来れば避けたかったのですが、
気を付けて飲むしかないと…

12月始めまで入院で経過を見て、
強い副作用が出なければ、
外来で検査を続けながらの治療を計画。

抗癌剤の種類も、経過を見て強いものを使うかどうか
この間に治療計画を検討。

抗癌剤の副作用が辛い場合は
入院管理はすぐ出来る体制を整えていきます。



まずはここまでが、今の治療に対する方針。



私は、

東京医科歯科大学のY先生からも言われていた顎の組織変異について、早いうちに手を打たなくていいのか先生へ確認します。



顎下の状態は、H先生の判断としては
悪くなっていく感じでは無いように見えていた、
というのが少し前の判断でしたが、

現在としては回復傾向ではなく、
前方へと拡大している事から、
近日中にMRI検査を受けることに。

ただ、結果がどのようなものだとしても、
顎に穴が開き、口腔低と顎下とが貫通する前兆との見方。

本人が顎骨の激痛を訴えなければ
顎骨壊死が原因で起きている可能性は低く、
このあたりは、MRIの検査で判断がつくでしょう。

もし病変部の中から癌が見つからず、
炎症組織、膿が出るだけなら
膿をよく洗い、清潔にして、
治癒を促す治療を続けるしかない。

癌が出てしまうようであれば、
やはり顎を広く切除か、
抗癌剤治療とするか…

再発無く癌が落ち着けば、
再建手術も検討出来るため、
まずは今出来ることから始めて行きましょう、と。



H先生の術後報告は以上。






癌の転移、進行が止まらない。

切っても、叩いても、
1~2ヶ月で他の場所に姿を表す。

今回のリンパ節切除でも、
転移の可能性が高まる節外浸潤が。

癌を囲い、全てを切り取れていなければ

たった1粒でも残っていれば、

また確実に癌は姿を表し、体を蝕む。



顎の病変部も、

正直に言って、
素人目に見てもただごとではない状態なのはたいぶ以前から感じていたこと。

ここ数日で、今までの病変部よりも前方の、
顎の先の方まで赤く、皮膚が固くなり始めている。

500円玉大になった病変部の更に隣には、
またビー玉程の新しい膨らみまで出てきている。

非常に深い放射線被爆の影響により迂闊に手が出せない。

出すなら顎もろとも切るしかない。
という状況なのは理解していたが、

何も手が出せずに拡大していく病変部を見ているのは、

何か出来ることはないのか!

と声を荒らげたくもなる。



実際、この件についてH先生に
何か出来ることは無いか、と何度も話を聞きに行き、
少し煙たがられた感じもありました。

何も出来ない事のもどかしさは、
私だけではなく、
先生もきっと感じていたのだと思います。






しかし、

不安な事はこれだけでは終わりませんでした。



その後、病室で妻と話をしたり、

マッサージをしている中で、

右頚部耳後ろあたりの異変に気付きます。



丸く硬結した、小さな膨らみが2つ。



つい先日、
左頚部から摘出した、がん転移したリンパ節と同じ感じのものだ。



これは、先生は知っているのか妻に確認すると、



まだ言ってない と。



ついさっきまで、
術後経過の説明に先生と話をしていましたが、
妻は、黙っていました。



4日程前から、肩凝りみたいな感じがしていて、
触っている間に大きくなってきた。
多分先生も気付いていないはず。

という…






この瞬間に、



凄く沢山の事を、



瞬時に悟りました。






あれだけ 絶対治るんだ! と

意気込んでいた妻が。



込み上げてくる想いに耐え、

ただ寄り添うしか出来なかった私に、

妻から声を掛けてきます。






👩今日はもう疲れたから寝るね。
家に帰ってゆっくり休んで。
一緒に報告聞いてくれてありがとうね。






私は、涙を噛み締めながら家に帰りました。






最後の大治療のつもりで望んだ小線源治療。

あの過酷な1週間と、壮絶な副作用に襲われた日々は、

恐らく人の体が耐えることの出来る

限界ギリギリの苦痛だったと思います。



それさえ乗り越えれば、

抗癌剤など薬物治療はあるとしても、

癌を切る手術、放射線などは、

もう受ける必要が無い筈なんだ!



そういう思いで治療に望み、

また今回も治療から2ヶ月で

癌が暴れまわり、姿を見せる。



まだ、しこりや、顎の病変部の

検査結果は出ていないが、

本人にしてみれば、

調べなくたって、こんなの間違いないよ…

そう言いたくなるだろう。



先生に言えば、また痛みを伴う検査もされる。

このペースで、次から次へと事が起きれば、

誰だって嫌になるし、

心も折れる。



そして、その折れた心と体を無理矢理引きずりまわして

更に辛い治療を強要される。



やらなければ、もっと激しい苦痛が待っているから…






11月25日



どこからの感染か、妻が院内で

急性胃腸炎になってしまった。



夜、嘔吐、下痢を繰り返し、

血圧も70まで下がるような状態となり、

相当に辛かっただろう…



抗がん剤なども出来る状態ではないため、

3日程安静に。






11月28日



急性胃腸炎から3日。



👩さっき個室隔離から解放されて、元いた部屋に戻って来ました✌
お昼ご飯も半分くらい食べられて、点滴も取れました🎵
夕方は3日ぶりのシャワーだー!😆💕

腸炎になって、さすがに私もちょっとふさぎ込んでた。
でも、みんなとLINEしたりメールしたりしてたら元気が出てきた!






11月29日



👩今朝体重はかったら、また30kg台に逆戻り…😖💧
やっと40kgになったばっかりなのに!
先日の胃腸炎で3日ばかし絶食したからなぁ。
今も、食欲はあるけどいっぱい食べられないし。



右頚部のしこりを生検した。

3つも大きくなっていた。

3箇所とも針を刺し、中の組織を吸引する。

また痛い思いをして…



このしこりが癌じゃないということは無いだろう。

もう、顎周辺を中心に、

両リンパ、もしかしたら全身まで癌が行き渡っていると考えてもおかしくない。



妻の体の中で癌が暴れまくっている…

そう思うと、もう悔しくて、辛くて、

言葉にならない(ノ_<。)






11月30日



👩今日から朝晩、1年計画で、抗がん剤が始まりました!

2週間飲んで1週間休薬、が1クール。

抗がん剤(Ts-1)飲むときは「消えろ~」と呪文のように、祈りながら飲んでます💖






12月1日



外出届けを出して、息子の待つ実家へ。






👩今日は息子5歳の誕生日🎉

ジィジとバァバにサーティワンのアイスケーキでお祝いしてもらってます💖

そしてそのアイスケーキをひとりで食ってます(笑)

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👩私、去年の息子の誕生日に入院してた💧
まさかの2年連続、誕生日入院になるとは。

来年こそは一緒に祝ってあげるぞっ🎵





息子が3歳の夏から入退院を繰り返し、既に1年半。

子供からしてみれば、ちょうど記憶が残る頃から

お母さんが一緒にいない。



でも息子は、元気だった頃に

沢山ディズニーに連れていってくれたお母さんを

よく覚えている。



いつもお母さんが、

ディズニーでどうやって楽しんでいたか、

どんな事をしていたか、

ボクをどうやって乗り物に乗せてくれていたか、

そこに行くと、

興奮したように沢山の言葉で教えてくれる。



でも今は、度々病院に連れていかれては、

やせ細り、聞き取りにくい言葉で話しかけてくる

点滴に繋がれたお母さん。



子供の目にはどう見えて、

どう感じているんだろうか…






12月5日



👩今日はウォルトディズニーの誕生日。

そして1年前の今日、
病理検査の結果「ガン」と宣告された日です。

あれからもう1年かぁ~。
時が経つのは早いものです…。






正式な結果ではないが、

H先生から、先日の右耳下頚部の生検で

癌が出たことを知らされました。

詳しく検査中で、今後の治療方針も含め、

詳細報告は後日との事。



癌患者にとって、

再発の知らせほど嫌なものはありません。

ようやく這い上がってきた落とし穴に、

もう一度蹴り落とされるような感覚を覚えます。






🧑やっぱり、そうだよな…右頚部。くそっ…
もしそうだとして、取り除く事出来るものなの?
前に1度大きく切っている所だし、
放射線も強く掛かってるし、
切れなかったら、取れなかったら…





もう、諦めるしかないの!?

という言葉を思わず言いそうになり、飲み込みます。






🧑厳しいなぁ…厳しいなぁ…(ノ_<。)
俺は 妻 の気持ちに寄り添うよ。
何があっても 妻 のための選択、判断をする。
ずっと寄り添うから…



👩また気持ちが後ろ向きになってるよ!
しっかり前を向いて!



🧑全部受け止めるよ、ちゃんと前を向いて全部受け止める。でも、俺は 妻 のために今、何もしてやれていない…見てることしか出来てないじゃないか…



👩そんなことないよ?
いてくれるだけでいいんだもん💕
治すのはお医者さん、
応援とお祈りは家族&友達、
本人はお祈りだけ。
本人、いちばんラクじゃん(笑)



🧑治ることを信じると言うことが、なにもしないで待ってると言うことと同じになっちゃってるんだよ(ノ_<。)
本人一番楽なんて、そんなこと絶対ないよ!!

でも、少し 妻 の気持ちわかった気がする。
何があってもその気持ち、曲げることは無いのな。
本当に 妻 は凄いと思う。
でもその決意が悲しくて、涙が止まらない…(ノ_<。)



👩ありがとう

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🧑そうか、いつの間にその気持ちを語ってたんだろうな…今まで気づいてなかったよ…
もう、俺に出来ることは先生を信じて、見守ることしか出来ない。
ただ、 妻 から寄り添ってきたとき、俺が必要になったとき、その時はどんな願いも叶えてやる!

一度しかない人生、自分で選び、前向きに進もう!



👩自分で選択した道がいちばん!



🧑ただひとつ、お願いがあるんだ。

俺は、残された時間、
俺たち二人の一生の総てを、
全部 妻 と話をしたい!!
気持ちをひとつにしたい!!
これまでのこと
これからのこと
妻 が考えていること
時間があるかぎり、全部話しよう!!



👩うん!そうしよう!!






妻 はもう全てを受け入れ、覚悟を決めていた。

今まで選んできた選択総てに後悔は無く、

何があっても前を向いて歩こうと。



私は 妻 の全てを支え、寄り添い、

一緒に前を向いて歩いていく。

もう後ろを見る事は出来ない…。