~漂流中~

2017年6月、舌癌になった妻(39)が亡くなった。ADHDの息子(6)、頼りない自分(41)を残して…

■舌癌43 休薬期間、骨髄抑制、前回記事の訂正

ひとつ、初めに訂正があります。






前回の記事の日付に間違いがありました。






前前回の記事で、

2/21 抗癌剤1クール目開始

と書いており、それは間違っていなかったのですが、



前回記事で、

2/25 休薬期間開始

と書いてしまっており、

抗癌剤投与中の約2週間くらいが

飛んでしまっていました。






本来の抗癌剤フルドーズ投与1クールは、

(治療内容によっても違いがあるかもしれませんが)

約1ヶ月のスケジュールの中で、

2週間の持続的な投薬期間と、

その後2週間の休薬期間で1クールとなっていたので、



今回の話では、

2/21  抗癌剤投与開始

3/6頃  投与完了、休薬期間開始

3/20頃  1クール目の終了

が、正しい抗癌剤1クール目の期間でした。






前回投稿の記事では、

話が飛び、日付が2週間程度、前にズレてしまいましたが、

今回の記事の日付と、妻の病状は

正しい期間で書かれていますので、

そのようにご理解頂けたら助かります。






では、以下

抗癌剤1クール目の投与期間が終わる頃から、

休薬期間となった 2017年3月中旬頃の

記録となります。









***********************

2017年3月4日



前回記事で書いた通り、

妻の たっての願い 



👩息子のスノーボードやってる姿が見たい!



この願いを叶えるため、

息子の初スノーボードのために、

息子と、いつも一緒に行っていた友人と新潟へ。






息子は、2歳、3歳と

家族で新潟へ行き、ソリ遊びをしながら

私たちがスノーボードを楽しんでいる所を

見て育ってきました。



4歳の時は、

お母さんが病気だから、雪山に行けない…

1年間はどこへも行けない日が続き、



そして5歳のこの年、

新しく自分の道具を揃え、

胸をワクワクさせて新潟へやってきた。



それはそれは嬉しかったでしょう。



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凄い顔に加工されてますね(笑)

2枚目、左上の方に 神立高原 って書かれてますが、

神立は行ってません😅



細かい事は少し割愛します。






流石に、

いきなり一人で山の上から滑る事も出来ないので、

まずは私がフラフープを持って、

息子をフラフープの中に入れて、

フラフープを握らせて上から滑らせました。



これが良かったのか、

滑ることへの恐怖心はまったく無く、

斜度が緩いとこでは一人で滑り始める。



こんな息子の滑りをみんなで撮影して、

LINEで妻の元へ届けました。



👩えっ!なんか上手くない!?



🧑初めてにしてはだいぶ凄いよね(笑)



👩グーフィーなんだね!私と一緒✨



沢山の動画を送り、

LINEで沢山の友達と話をして、

嬉しさを爆発させる妻。



👩来年は私も雪山いくぞー!



みんなと、来年の約束…

沢山の励ましを貰い、



息子の滑りは、

妻を勇気づけ、



妻の願いの1つは叶いました…



妻は、これを

この先も続く辛い治療を

乗り越えるエネルギーに変えて、

次の試練へと立ち向かっていきます。








3月6日



ようやく、抗癌剤1クール目の投与期間が終わり、

必要なだけの抗癌剤をすべて入れることが出来ました。



これから約2週間は休薬期間です。



この間に、体調は徐々に回復し、

食欲などが戻っていくと同時に、



抗癌剤の副作用により、

骨髄機能にダメージを受け、

特に白血球数が減少する事により、

免疫力が大幅に低下する現象が起きてきます。



これが骨髄抑制です。



Pfizer - がん治療と骨髄抑制
ganclass.jp



簡単なメカニズムとしては、

上記のPfizerのサイトにもありますが、



抗癌剤が癌に効くそもそもの仕組みとして、

非常に分裂の早い細胞に対して

ダメージを与える性質をうまくつかって、

他の細胞よりも分裂スピードが早い癌に対して

有効に効く薬としている訳ですが、



骨髄の細胞も非常に分裂が早く、

抗癌剤がとても作用しやすい事から、

骨髄抑制という副作用が起きてきます。



骨髄では、血液の成分を作り出す仕事をしているため、

抗癌剤の影響を受けると、

白血球や、赤血球、血小板などが作られず

減少していってしまいます。



この中で特に問題となるのが、白血球です。



Wikipedia - 白血球
ja.m.wikipedia.org



白血球は免疫力の要であり、

これが少ない、または、

ほぼ機能していないという状態は、

どんなに弱い細菌やウイルスであっても

抵抗をする事が出来ずに、

体を蝕まれて、

死に至るという結果になってしまいます。



そのため、

骨髄抑制の影響が出始めるこの休薬期間の間は、

血液検査を行って白血球数を初めとする

血液成分のモニタリングを行って、

危険な状態になっていないか、

日々チェックが必要になります。



もし重篤な状態となるようであれば

ICU、無菌室などによる治療も必要となります。






しかし、抗癌剤治療を行っている方の多くは、

この休薬期間だけが、唯一の体調が戻る期間として、

好きなことをしたり、

好きなものを食べたり、

友達と過ごすなどして、

ようやく過ぎ去った辛い状態のストレスを

発散したくなりますよね。



ここで白血球数が減りすぎて

重篤な状態となると、

せっかくの休薬期間を無菌室などで過ごすことになり、

それが終わればまた直ぐに次の抗癌剤投与が始まる…



抗癌剤のフルドーズが必要となるような状態では、

投与回数も1回では済まないのが一般的でしょうから、

人によって違いはあれど、

妻の場合は、これを6クール(半年)続けて、

癌を抑制出来るか、

体調を維持出来るか、

それを乗り越えなければならなかった訳です。



骨髄抑制ってやつは、

本当に厄介な副作用なんですよ。






妻も、この休薬期間に色々な事をやりたい!と、

計画をしていました。



外泊で実家に帰る。

ディズニーに行く。

息子と一緒に過ごす…



ディズニーはそれなりのエネルギーが必要だとしても、

家に帰る、息子と過ごす…

生きていれば当たり前の事ですよね。

そんな当たり前の事ですら、

それが出来るかどうかは、

1ヶ月の間のわずか1週間ほど、

その間に、骨髄抑制の状態を含む

体の調子が整うかどうかに掛かってきます。






同日、

抗癌剤1クール目の投与が終わったことから、

主治医の先生から状況報告と、

次の治療計画の話がありました。



こちらも、あまり正確に記録が残っていませんが、

色々な話をしています。






【 先生より】

・食事が食べられていない。
 今、口から食べている量では栄養が足りない。
 やはり中心静脈への高カロリー輸液が必要になる。

・中心静脈を行うために、CVポートの埋込みを行う。

 (CVポートの話は ■舌癌37 の中でも伝えています
 が、結局この時は本人の頑張りもあり、埋込みはまだ
 必要無い、という判断になっていました。)

aegis-pilebunker.hateblo.jp

・CVポートを付けることで、投薬や栄養なども、
 通常の点滴を使うよりも多く、早く流せるため、
 薬などが口から飲めなくても対策出来るようになる。
 今使っている点滴や、薬の量は、腕の血管が耐えられる
 限界の量のため、血管へのダメージが大きく、
 刺し直しなども多くなり、針をさせる場所が無くなって
 しまう。

・CVポート留置は簡単な手術。来週火曜以降に行う。

・色々な医療体制は必要だが、外泊は出来るように
 やり方を検討していく。外出は、体調がよければ
 車椅子などで出来る。

・顔に浮腫が強く出てきている。抗癌剤を入れるために
 同時に入れていた水(生理食塩水)が原因とは思うが、
 頚部両リンパ切除されている為、水が流れにくい。
 抗癌剤副作用の影響もある。
 これについて、肝機能障害の値は出ていないので
 心配はない。

・顎下の穴の状態と、拡大、首周りの状態は、抗癌剤
 による明らかな改善傾向はまだ見られない。組織の
 壊死も起きている。これから抗癌剤が効いてくれば
 いいが。今は、感染症などを起こさないように、
 洗浄して清潔に保つ事が大事。

・何か、外出の予定をしていると聞いていますが、
 (3/10(金)にディズニーに行く予定をしていました)
 白血球数が落ちなければいいです。
 白血球数が落ちた時は無菌室とかになりますから、
 その時は諦めてくださいね。
 看護師ともよく相談してください。

・次の抗癌剤は、2週間後くらいになりますが、
 今回の効きを見ながら、使う抗癌剤や量をまた調節
 しますから、その頃にもう一度お話しましょう。






先生からの説明はこんな感じだったかと思います。



食事は、固形物も食べていて、

本人としては頑張っている所だが、

必要な栄養は足りず、

通常の点滴で出来る栄養補給の範囲では

生きるために必要なエネルギーを補いきれない。



いつの間にか妻は、

最大限の医療介護を受けなければ、

生きることさえ出来ない状態になっていた。



それでも妻は、自力で生きるため、

まだ諦めるなんて事は出来ないため、

これなら出来る!

これならどう?

と、前向きに色々な気持ちを伝えてくる。



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👩こんなの欲しい!

 これあれば、フルーツとか野菜のスムージー作って

 飲めるよね!これなら栄養補給出来ないかな!?



もう、即買いました。

今日食べるものが足りない、栄養が足りない

という状態なんです。当然買います。



私も、義母も、

何とかして美味しく飲めるスムージーを作ってやろうと、

色々食材を持ち寄り、作り方も調べました。



飲み込みもしにくいので、

あまり重たくならないようにするのも

色々工夫しました。



本当に色々やりましたが、

何日かかけて、飲みやすさで落ち着いてきたのは、

い・ろ・は・す 系の水分を使って

1種類のフルーツ(りんご、バナナ、モモ缶詰など)

と、ウイダーinゼリーを混ぜてあげるのが

栄養的にも、飲みやすさ的にも良かったようです。



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その当時、セブンイレブンイトーヨーカドー系列

だけで扱っていた、このい・ろ・は・す

どんなフルーツや味でも飲みやすい感じにしてくれて、

一番美味しい✨と好評でした。

これ以外には、今でも売っている

い・ろ・は・す 梨 が美味しかったみたいです。






先生との話のあと、

看護師さんとも、今後の看護体制や、

外泊時、自宅療養などを考える時に

どうすればいいかなどの話をしました。

これもあまり記録がなく、詳しくは書けませんが…






【 看護師より】

・今後、自宅での療養などを検討する場合、
 訪問医療サービスを使うようにした方がいいでしょう。

介護保険の申請も必要です。
 役所の介護福祉の窓口に相談して下さい。

・自宅にも帰って、ゆっくりさせてあげたいですよね。
 家族と、息子さんとも一緒にいたいですもんね…



自宅介護の準備についての話が殆どでした。



多分、末期癌の患者さんには、

自宅でゆっくりしたい…

という方も多いんでしょう。

病院側も、医療保険の入院日数制限などを

気にしていたというのもあると思います。



hoken-kyokasho.com



正直なところ、

この問題がある事は知っていましたが、

自分がそれを考える余裕は

全くありませんでした。



多分ですが、

義母と、看護師さんとで、

話をしていてくれていた、というのは

あったんじゃないかと思います。



病院側も相当色々対策してくれていたようで、

後々に分かった事ではありますが、

保険適用外にならないように

一度退院手続きをして精算をしてから、

外泊を2~3日挟んで、

再入院のような対応の中で、

うまく対応もしてくれていたらしいです。

本来であれはその程度の対策では

1回の入院の継続にされてしまうんじゃないかと

思いますが…

いずれにしても感謝しかありません。






病院側も、今の妻の状態では

退院なんて出来る状態じゃない

っていうのは分かっていたはずです。



日々、鎮痛剤の継続的な投与と、

フラッシュ(痛みが増したときに患者自身でボタンを押して

定量を急速に投与する事が出来る)なども

やっていたため、頻繁な薬の補充、交換も必要で、



気道確保のために気管切開をしていたため、

吸引による痰の吸い取りもやっていた。



これらを全部自宅で出来るような準備をして

介護を行うという事が、

どれほど大変で、安心ができない状況か

それなのに、自宅でゆっくりしたい、なんて

とてもじゃないが、自分は安心なんて出来ない…

自分の率直な意見はこうでした。



(そのような介護を自宅でやられている方は

きっと沢山いらっしゃるんだとは思います。

ただ、この時の自分や、息子を見てもらっていた

義父母にこれをやってもらう、なんて事は、

とてもじゃないですが、容認できませんでした。)






退院や、自宅療養を促される背景には、

あまり声を大にして言えない色々な事情がありそうです。

それを察知出来ずに、いきなり怒り状態に

なってしまう人は、病院は俺を○そうとしている!

なんて言い出してしまう人もいるんでしょうね…





看護師とは、これ以外にも

妻から話をしていた事があったようです。






ディズニーの話です。



妻が入院していた病院は、

比較的ディズニーリゾートから近い所でした。



以前にも、ディズニー好きな患者さんから

退院も外泊も出来ないけど、

何とかしてディズニーに行きたい…😢

と相談を受けた事がある看護師さんがいて、

妻も同じ相談をしていた事から、

その看護師さんからお話を聞くことが出来ました。





あまり、詳しいことはここでは言えないのですが、

非常に特別な対応として、



医療機関が、必要だと判断した場合に限り

ディズニーに医師を配置して

緊急事態に備えて連携体制を取りながら、

ガイド無しのガイドツアーのように、

事前に行きたいところのスケジュール、プラン

を出して、事前にスタッフへ通達してもらうことで、

円滑に安全に1日楽しむことが出来る。



という事が出来る体制があるんだそうです。



個人で利用出来るサービスではなく、

あくまでも医療機関からの要請で

ディズニーに依頼が出来る事のようです。



今回のディズニー計画は、

既に妻から看護師へ、そのようにしたい!

と依頼をしていたらしく、

一日のプランを出して、

可能かどうか確認をしていた所でした。



私も初めてこの時にこんな話を聞いて、

外出すら出来るかわからない状態なのに

ディズニーなんて、本当に大丈夫か?

と思いつつも、ディズニー好きな妻には

それは言えない感じがありましたが、

この連携体制の話を聞いて、とても安心しました。






結局、この計画は

一度は色々あって計画を中止されました…



しかし、私からの再度のお願いで

もう一度計画をし直して、

妻にとって、決して忘れられない

ディズニーの最後の思い出となります…





それはまた次回のお話に…