~漂流中~

2017年6月、舌癌になった妻(39)が亡くなった。ADHDの息子(6)、頼りない自分(41)を残して…

■舌癌32 術前抗癌剤治療と、妻と知り合って23年

2017年1月



年明けから再入院し、

術前抗癌剤治療からの、

舌、右顎の大部分切除手術による治療を進める事になった妻。



これからの治療は、

手術後経過と、抗癌剤経過が良好とならない限り、

退院は出来ない、と正式に宣言された上で行っていく、

年齢が若いこともあって、

治療を諦めて終わらせず、可能性に掛けてみよう

という思いを込めて行う治療となりました。






1月10日



数日前からTS-1を開始し、数日経過を観察。

重篤な副作用が無いことを確認の上、

今日から、ネダプラチン、ドセタキセル併用による

3剤で癌を本気で叩く為の抗癌剤治療が始まります。



ネダプラチン、ドセタキセル、及びTS-1については以下参照。(国立ガン研究センター ガン情報サービス より)



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■ネダプラチン

プラチナ系抗癌剤の1つ。

対象となる癌は、

 頭頸部がん
 肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん)
 食道がん
 膀胱がん
 精巣(睾丸)腫瘍
 卵巣がん
 子宮頸がん

細胞障害薬という種類の薬。
その種類の中で「白金製剤」と呼ばれるグループに属し、白金(プラチナ)を含んでいます。
DNAに結合することによって、がん細胞の増殖を抑えます。



ドセタキセル

タキサン系抗癌剤の1つ。

対象となる癌は、

 乳がん
 肺がん(非小細胞肺がん)
 胃がん
 頭頸部がん
 卵巣がん
 食道がん
 子宮体がん
 前立腺がん

細胞障害薬という種類の薬。
その種類の中で「微小管阻害剤」と呼ばれるグループに属し、化学物質のタキサンを含んでいます。細胞分裂を阻害することにより、がん細胞の増殖を抑えます。



■TS-1

以前から抗癌剤として高い効果を証明している5-FU(フルオロウラシル)という成分を、より効果的に、長時間体内で作用し、副作用を抑制するための全ての成分が含まれている薬です。抗癌作用は以下参照。



■5-FU(フルオロウラシル)

フッ化ピリミジン系抗癌剤の1つ。

対象となる癌は、

 胃がん
 肝がん
 大腸がん(結腸がん、直腸がん)
 乳がん
 膵臓がん
 子宮頸がん
 子宮体がん
 卵巣がん
 食道がん
 肺がん
 頭頸部がん

細胞障害薬という種類の薬。
その種類の中で「代謝拮抗剤」と呼ばれるグループに属し、フッ化ピリミジン系の化学物質を含んでいます。増殖の盛んながん細胞に多く含まれる酵素を利用し、がん細胞の増殖を抑えます。

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数日前から始めているTS-1により癌細胞の分裂を遅らせ、

TS-1の効果が徐々に減退するタイミング、

つまり、癌細胞がまた活発に分裂をし始めるタイミングで

ネダプラチン、ドセタキセルを入れて、

一気に癌細胞を叩く、という事になります。



この抗癌剤の使い方は以前にも伝えていますが、

主治医曰く、

国立がん研究センターでも研究中の投薬方法。

という事で、ちょっとネットで調べたくらいでは

エビデンスとなる資料を見つけることも出来ない状態。



ただ、この3剤の組み合わせ

(TS-1、ネダプラチン、ドセタキセル)

による化学療法は、頭頸部の扁平上皮癌に対して

従来から効果があるとされている

DCF化学療法 (5-FU、シスプラチン、ドセタキセル)

よりも高い治療成績を残し、

より副作用が抑えられる組み合わせとしての結果が

近年増えてきている方法で、

効果自体は充分に見込まれている方法。



そして、ネダプラチンもドセタキセルも、

いきなり癌細胞を攻撃、死滅させる薬ではなく、

どちらも細胞分裂時の働きを阻害することで、

分裂後の細胞がどちらも正常細胞になれずに

機能不全を起こさせ、自滅に追いやる効果があるため、

癌細胞が分裂増殖しようとした時に

ネダプラチン、ドセタキセルが最大効果を発揮するように

使う方がより効果が高いだろう、

という理屈の部分は既に判明しているものです。



以下は、シスプラチンよりもネダプラチンの方が

延命効果が高いとされる研究結果だそうです。

正式に学会報告されている事から、

ある程度の信頼性を持った情報だと言えそうです。



がん情報サイト「オンコロ」
肺扁平上皮がん ネダプラチン(アクプラ)+タキソテールが生存期間を延長
https://oncolo-jp.cdn.ampproject.org/v/s/oncolo.jp/news/151130k01/amp?amp_js_v=a2&_gsa=1&usqp=mq331AQCCAE%3D#referrer=https%3A%2F%2Fwww.google.com&_tf=ソース%3A%20%251%24s&share=https%3A%2F%2Foncolo.jp%2Fnews%2F151130k01



シスプラチンよりもネダプラチンを使った方が

予後に良い傾向が見られたという統計は

調べれば結構沢山見つかります。

(とはいえ、「予後がよい」 とは、
今の苦痛を除いてくれる。
癌が縮小した。
という事とは必ずしもイコールでは無い、という事は付け加えておきます。)



最新の情報はどうなんでしょうね…

ここに書いている事が全てにおいて正しいなんて事は

決して無く、しかも同じ部位の、同じタイプの癌でも

その特性は千差万別ですから、

だから専門家でも、医者でも対応が難しく、

一番助かる見込みのある方法、つまり

エビデンスが確立している方法で

まずは治療を進めよう、となる訳です。






本編に戻ります。



昼頃にネダプラチン、ドセタキセルの点滴を入れたあと、

16時過ぎまでは食欲もあり、

大好きなモンブランを食べたと連絡があったが、

その後はLINEを入れても既読にもならない。

辛いのか、寝てやり過ごす作戦か…

結局この日は夜までLINEが既読になる事は無かった。



実は、この時自分は風邪をひいてしまい、

病院に入る事が出来なくなってしまった。

下手に会いに行き、感染症を起こしてもまずい。

吐き気、だるさとの戦いの中、

側にいられても逆に辛いだけ、という事もある。

とにかく、身悶えするような辛さと戦っている間は、

全ての力を、辛さに耐える事だけに使って欲しい。






1月11日



昼頃、抗がん剤の副作用が確実に始まった、

と連絡があった。

胸の辺りがもやもやし、

多く何かを口にしたら吐きそうだと。



何も食べなければ収まる吐き気ではないため、

ゼリーや、OS-1など口にしやすいもので、

ゆっくりと水分補給をすることを勧める。

その後は連絡しても既読にはなるが反応無く、

辛さと戦っていると思われる。



お義母さんが見舞いに行ったので様子を聞いたら、

吐き気があり、食欲が無いとの事。

また、顎の腫れが大きくなった感じがするとのこと…



前日、抗癌剤投与前の水分点滴で

浮腫んで苦しいと言っていたので、

その影響だけと思いたいが…

また、特にドセタキセルの副作用にも

強い浮腫が出る事が知られている。

しかし、抗癌剤投与前から

顎の先あたりに固いしこりが広がってきている事から、

単純な浮腫とは思いがたい。



とにかく、今行っている治療は、

抗がん剤による腫瘍を小さくする治療だ。

今はそれが効く事を祈るしかない…






1月12日



まだ風邪の影響で妻のところにはいけない。

11日夜から暫く連絡が取れず心配していたが、

夜中に吐き気に襲われ2回吐いたと、朝連絡があった。



昼過ぎに連絡があり、

昼食にアイスを出して貰い少し食べられたらしい。

また、実家から暖かいスープを持っていってくれているとのこと。

本当に助かります。






1月13日



副作用が少し落ち着き、余裕が出てきたらしい。

調子の悪さは、つわりの時のようとのこと。

ネダプラチンを入れてから4日目で少し楽になってくるのが分かったので、

次回の投与に対して気持ちにも余裕が出てきたらしい。

明日は妻の39歳の誕生日。

自分は風邪がまだ治りきらない…






1月14日



39歳の誕生日おめでとう🎂



本当に大変な治療、入院のさなかだけど、



無事誕生日を迎える事が出来たね。



ひとつの節目を過ぎれば、



自分を取り巻く環境、体調、運気…



色々な事が、流れが変わっていく。



まだまだこれから楽しいこと、



嬉しいことがいっぱいあるよ!



妻の39歳を、希望に満ちた最高の1年にしよう!



お義母さんが、地元のケーキ屋さんに

ダッフィーのケーキを作ってもらい持ってきた!

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👩ケーキ食べれた💕

なかなかおいしかったよ。

バタークリームのケーキ、ちょ~久しぶりに食べた。

今日はホント調子良くてよかった!



自分も行きたかったが、風邪が治らず自宅待機…



どうか、2017年、妻39歳の1年が



最高の1年になりますように…。








🧑妻と高校の時に知り合ってから23年。

あの時は、妻と付き合うことになるなんて思ってなかった。



妻も、生涯を通しての大親友と知り合い、

みんなで生徒会でバカな事ばっかりやって、

合間に真面目に仕事して、本当に楽しかった。



卒業後、自分は大学に行ったけど、

妻はすぐに就職して働き始めてたよな。

結構凄い大会社で。

大学に行った自分なんかよりよっぽど凄い就職先だったよな(笑)



それから2年、

音沙汰無く過ごしていたけど、

ちょうど自分たちが生徒会3年の時に1年だった奴らが

また文化祭で楽しそうな事やってるからって、

高校の文化祭に行こうって当時の生徒会メンバーに連絡したんだけど、

みんなそこまで暇でもなくて、

考えとくわー

で終わってた。



みんなが来るか来ないかは分からなかったけと、

逆に、無理に誘って一緒に行くより、

なんとなくパラパラと、

あれ?本当に来たの!?

なんて人が集まる方が面白そうだなーなんて思って、

あえてそれ以上声を掛けずに、

でも、1人でも誰か来てくれたらそれでいいかな、

くらいの気持ちで文化祭に行ったんた。



そこに来てくれたのは、

妻、1人だけだったな。

えっ、まさか2人だけ!?(笑)

なんてwww



でも、

薄々気付いてはいたんだ。

声を掛けた時に、

喜んで 行くよ!

って言ってくれたのは妻だけだった事。

なんとなく、みんなは来なそうだな…と思ったこと。



でも、それならそれでもいいかな。

そうだったらちょっと嬉しいな、って思ってた。

もし本当にそうだったなら、

始めてみてもいいかなって。

2人で前を向いて歩いていく人生を。



まさか本当に2人だけだとは自分も思わなかったけどさ(笑)



あの時、近くのジョナサンでいっぱい話したよな。

あの頃はまだインターネットが世の中に普及し始めたばかりで、

メールの使い方わかんない!

URLってなんであんなに分かりにくいの!?

なんて、プンスコしてた妻に

色々教えて使いこなせるようになって、

パソコンの先生なんて呼ばれたり、

実はスノーボードを始めていた自分よりも

妻の方が先にやり始めていた事にビックリして、

一緒にザウス行こう!

(今や知らない人も多いでしょうね。千葉県の南船橋にあった大型室内スキー場。)

なんて誘ったりして。

今思うと、本当に時代を感じるな(笑)



あの時から19年。

高校で始めて知り合ってからは23年。

実に半生以上の時間を妻と一緒に過ごしてきた。

自分は、妻と一緒になって本当に幸せだった。



でも、

自分は今、妻を守れているかな…

支えられているのかな…

幸せにはしてあげられているんだろうか…

出来る限りの事はしているつもりだけど、

病気に苦しんでいる妻を見ると、

自分は本当に無力だと思う。

何もしてやれていない、

辛い思いしかしていないと感じる。

今日だって、記念すべき誕生日なのに、

風邪ひいて一緒にお祝いも出来ない(涙)

今、辛くて仕方がない…






👩私も (私) くんがパートナーでホントに良かったと思ってる。

いっぱい心配と迷惑をかけちゃってるけど、

絶対復活してやるんだ!

こんな病気に負けてられるか!

私にだって守りたいものがあるんだ!






伝えたいことが沢山ある。

話したいことが沢山ある。

このまま、話も出来ないような状態になってしまうかもしれない。

なんて思いは、

治療が成功して生きて家に帰る事を望む今、

考えてはいけない事…

になってしまっている。



話が出来なくなるかもしれないから、

今話をしよう、なんて思いは、

どんなに辛い状況になっても最後には必ず



👩私は治って家に帰るんだよ?ふふん(ФωФ)



なんておどける妻の前では、

そんな後ろ向きな思いは封印するしかなく、

ただ胸が締め付けられるような思いを

噛み締める事しか出来なかった。