■舌癌15 過去最悪の痛み
2016年7月1日
頚部放射線治療後、
約1ヶ月弱経過し、喉の荒れ、味覚障害も収まり、ようやく好きな食べ物が食べられるようになった頃。
抗がん剤以外の治療を終えた一旦の快気祝いと、これからの順調な回復を祈って、しゃぶしゃぶを食べに行ったのは前回までのお話。
その食事の最後で、小さな錠剤の薬が舌の付け根付近にはまって取れなくなり、痛みが。
舌の付け根に出来た潰瘍が酷くなり、
潰瘍の真ん中が窪みのようになっているような感じで、そこに物が詰まってしまう。
しかし、
潰瘍は、恐らく放射線潰瘍で、
舌や口腔内に無数に出来ており、そのうちの1つがたまたま物が落ち込みやすい場所に出来てしまっただけ。
そんな風に思っていました。
思うようにしていました。
悪く考えればいくらでも悪く考えられる事は沢山ある。
口の中の潰瘍なんて、
考え次第ではすべてが癌の再発だとさえ思える。
そういうなかで癌を治す為の治療だと信じてこの治療を続けているのだから、悪いことばかりを考えてしまう訳にはいかない。
少し心配をしながらも、
放射線治療の早期副作用の影響は、治療後半から約2ヶ月近くは続く可能性があり、
挽期副作用は半年~1年後などに起きる事が多く、
小さな変化で一喜一憂は出来ず、慎重に経過を観察し、かつ、出来る限り早く主治医へ相談する事が大切。
主治医への相談は救急ですぐに出来る事になっている事と、口腔内の荒れにはケナログ(ステロイド系の軟膏)が処方されており、まずは薬を塗りながらよく経過を観ることに。
7月1日からは放射線治療の経過を見ながら、次の抗がん剤治療の計画を立てていく期間とし、
2015年11月下旬から続いていた会社の長期休みを一旦終えて、会社復帰する日でもありました。
妻は、
共に過ごした家よりも、実家の方が会社に近く、
かつ、もしもの時にすぐ動ける両親がおり、
会社の送り迎えも可能ということで、
息子もいる実家から会社へ行くことに。
いざ会社に行ってみると、
椅子に座っているだけでも体力を消耗し、
以前は電話番もしたので、リハビリの為に続ける事を申し出たようなのですが、舌足らずなしゃべり方のため相手に言葉が伝わりにくく、
ものすごい疲れた😰
と。
食事も昼の時間だけで食べきることが出来ないため、小さなおにぎりやゼリーなどをちょこちょこと取りながら、
その度に口腔ケア用のスポンジで口の中を綺麗にしなければならないため、
自分のやるべき事が出来ていない…
と申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまったようです。
それでも、
会社の仲間は、妻の体の事を気遣い、
出来ることだけしてくれればいいんだよ。
辛かったら休んでいても、横になって寝ていても構わないよ。
と、大変理解をしてくれたそうです。
本当に有り難い事です。
しかし、
そんな頑張りも束の間。
2016年7月4日
仕事復帰してからわずか4日後。
舌が沁みて、舌の付け根に出来た窪みに物が詰まりやすく、痛くて食べられない。
と連絡が。
出来るだけ刺激の少ないもので、カロリーが取れるものを、ということで、カロリーメイトのチョコ味を牛乳に溶かしたものを主食に、お粥を少々。
しかし、お粥はごはん粒が舌の付け根に入りやすいため、パンの方が良くないか?と勧めてみたが、ごはん派の妻は、どうしてもごはんが食べたいと。
ただでさえ食べられないため、好きなものを食べる事がストレス解消にもなっていたようです。
放射線治療後、
味覚障害、口腔内の荒れなどから殆ど何も食べられずに数日を過ごしたために、体重も目に見える早さで減少。
それを少しでも元に戻そう、という意気込みもあったでしょう。
何とかどうにか食事をし、
これくらいの事が出来なかったら元気になれない、会社復帰できない、
と気合いで食べて、元気に振る舞っていたのかもしれません。
そして、
舌の痛みに耐えながら1週間の勤務を頑張り、
7月9日、10日の土日
久々に家族3人で我が家に帰り、ゆっくり過ごしてみる事に。
その時の7月10日(日)、最悪の事態が起こります。
朝からゆっくり起きて、家族の団欒を楽しみながら、妻は朝から昼まで掛けて食事を続けていた時でした。
痛い……
と右頬を押さえながらテーブルにうずくまっている。
大丈夫?
また舌の付け根に物が詰まって、そこから激しい痛みが続いているらしい。
何度か詰まりを取ろうとうがいをしにいったが、詰まり物は取れたのかどうかわからず、痛みだけは続いている。
痛み止めにロキソニンを飲むもすぐには改善されるわけもなく暫く痛みに耐えていたが、遂に限界が。
頬を押さえ、
しくしくと涙を流しながら、
お腹がすいてるのに食べられない…!
痛くて何も食べられない…!
もう死んだ方がましだ!!
妻の初めての弱音でした。
異常を感じてから約1年。
手術等、癌治療を初めてから約7ヶ月。
舌切除、
頚部リンパ切除、
頚部放射線治療、
放射線副作用による口腔内の激しい荒れ、
味覚障害と痛みで食事が殆ど食べられない1ヶ月。
やっとこれらを乗り越え、
ようやく食べられるようになった矢先に起きた舌と、舌の付け根の痛み。
今まで、
痛み等の状況を話してくれた事はありましたが、弱音を吐いた事は一度もありませんでした。
この時感じていた痛み、
どんなに治療をしても無くならない辛さ、
少し良くなり、前を向こうと思った瞬間に出足を払われ、次の異常が起きるという繰り返しが起きる悔しさ…
相当辛かったんだと思います。
気丈に振る舞っていましたが、相当我慢していたんだと思います。
処方されている痛み止めを使っても痛みはひかない。
妻は助けを求めている。
これはもう、経過を観ている状況ではない。
そう感じた私は、すぐさま病院の救急外来に連絡。
「今すぐ連れてきて下さい」
と言われ、夢中で遊ぶ息子に
お母さんが大変なんだ。すぐに病院に行かなきゃいけない。
と言い、嫌だ嫌だと駄々をこねる息子と妻を抱えて車に乗り、病院へ向かいます。
家から病院は車を飛ばして約20分。
この時、お昼少し前の11時くらい。
少し駄々をこねていた息子を車の中で説得し、
妻の両親に、すぐ病院に来て貰うよう連絡し、
病院の救急車が停まるスペースの横に車を停め、
急患です!すぐに車どかします!
とだけ伝えて病院に駆け込みます。
少しの待ち時間…
妻が痛みに耐えている間、息子が言うことを聞いてくれる筈もなく、下手に両方どうにかしようとすれば、余計に妻のストレスになるため、とにかく子供の相手をしながら待合所で待つことに。
妻はうずくまったまま。
その間に妻両親が到着。
自分の車を駐車場に移動してくる、と伝え外に出ている間に妻は診察室へ。
自分が戻ると、妻両親から
今診察室入ったよ。
と伝えられ、息子がここにいたら妻の方に集中出来ないからと、
妻を頼む。
と言われ、息子を連れて遊びにいってくれることに。
その後、診察室から車イスで出てきた妻に駆け寄り、車イスを押す看護師に状況を聞きます。
腕には点滴。
日曜日のため主治医、担当医は居なかったが、同じ耳鼻科の当直先生がいたため、状況はすぐに把握。
口腔内の診察はするも、急患外来で出来る事は限られており、今は点滴で痛み止めを入れるしかないという。
薬名は忘れましたが、救急外来で即座に使える痛み止めはロキソニンやボルタレン同等のものしかなく、緊急手術などにならない限りこれ以上の処置は、今は出来ないと言われました。
30分程で効いてくるだろうから、暫く頑張ってと言われ、救急外来用のベッドへ。
付き添い、暫く様子を見るも、痛みはひかない様子。
そんなさなか、妻から言われます。
まだ点滴時間掛かるし、お腹すいたでしょう?
売店で何か買って食べてきなよ。
涙が出そうになりました。
妻がこんな状態でご飯なんて食べる気にならないよ…と伝えるも、
日曜は売店のお弁当とか少なくて、すぐ無くなっちゃうから早く行った方がいいよ。
どうせ待ってもらう事しか出来ないんだから、今のうちに行ってきな。
と、自分の事より私の事を気遣う妻。
これでは行かない方が妻に気を使わせると思い、売店へ。
おにぎり2つ程を流し込んで、すぐに妻の元へ。
点滴開始から30分以上経過するも、まだ痛みはひかないらしく、様子を見に来た看護師に伝えます。
座薬の痛み止めも使えますが、使いますか?
との提案。
お願いします。と伝え、座薬を入れて貰う。
それから数分後、
すうすうと寝息をたてて寝始めました。
やっと痛みから解放されたようです。
それから1時間くらいでしょうか、暫く付き添い、穏やかに寝ていましたが、
点滴も終わり目が覚めた時に痛みを聞いてみると、
まだ痛い…
歯痛と、中耳炎が同時にドーンと来た感じ…
でもさっきよりはだいぶマシ。
と。
改めて耳鼻科の先生に呼ばれ、診察室へ行き、状況を聞きます。
痛み止めは、救急外来で出来ることに限りがあること。
今の状況の判断は、まずは主治医に見て貰うしか判断のしようもないということ。
これだけ痛みが出ているのであれば、明日必ず病院に来て貰って、今後の治療をどう進めるのか確認が必要なこと。
舌の付け根には、小さな窪みが出来ていて、これが何なのか、今この場では答えが出せないこと。
いずれにしても、
今日は一度帰り、明日もう一度主治医の診察を受けなければ、これ以上何も出来ない事と、
救急外来というのは、以外と出来ることが限られていて、今の妻の病状に対して適切な処置は難しいんだな。
という事が分かったので、一旦妻を連れて実家へ帰る事に。
その頃、息子は近くの水族館に連れていって貰い、ご機嫌で帰ってきました。
全ての状況を妻両親に伝え、
明日、朝イチで病院に行かなければならない事をお伝え。
妻の会社に、明日は検査のため休む事を友人にLINEで連絡。
自分も休みを取ろうとしましたが、病院には実家から送って連れていってくれるので、自分は会社に行きなさいと言われ承諾。
夜、自宅に帰り、舌の痛みについて色々調べていくと、気になる症状が。
口腔カンジダ
wikipedia
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%A3%E8%85%94%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%80%E7%97%87
口腔カンジダ
J-Stage
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mmj/58/2/58_17.004/_pdf
出てくる情報の通り、妻の舌には放射線治療副作用による黄色いかさぶたのようなものが多く出来ていた。
先生にも相談していたが、放射線治療で必ずそういう状態になるらしい。
また、それを剥がしたり、磨いたりすると、出血もするし、余計に舌が荒れてしまってもっと酷くなるため、剥がしたり磨いたりせず、自然に剥がれるのを待つ方がよいという。
しかし、
口腔内の荒れを治すために、ステロイド剤のケナログを長期に使っており、舌の付け根にも塗っていた。
しかし治るどころか悪化しかしていない。
もしカンジダだとしたら、悪化して当然の事を繰り返している事になる。
ただ、痛みの本体は…
放射線潰瘍ならまだ治癒の見込みはある。
顎骨壊死、癌再発の可能性もある。
それは然るべき検査で明らかになるだろう。
まずは、今起きている症状からして、気になる所は潰しておきたい。
翌朝、仕事に行く途中で病院へ電話し、今日診察に行くためカンジダの検査も検討してほしい、と伝える。
実はこの頃、妻がずっと実家にいたため、妻両親にもあらゆる情報を伝え、何か感じる事があればすぐに病院に相談するよう伝えていました。
しかし、
"悪いことを考えると悪い方に行ってしまう"
という考えが妻実家にあり、
いつでも
"大丈夫大丈夫"
と思っていれば大丈夫だから、と目の前で実際に起きている事からは目を反らし、いざ本当に悪いことが起きたときには
"じゃあどうすればいいの?"
"その時に考えればいいのよ"
と、どうしても
"仮定 と 準備"
という事に気持ちを向けたがらない。
また、対策自体も架空の話なんだから、考えても仕方がない、と、思考を巡らす事にストレスを感じるらしい。
自分の言った事はことごとく遮られ、逆に
"どうしてそういう悪いことばかり言うの?"
ととても疎まれていた感があった。
妻もそのような家庭で育ったためか、同じような考えがあり、自分が心配しすぎる事に対して、
"治すのは医者。私たちはそれに従えばいい"
と、私の心配を聞き入れなかった時期でもあった。
そのため、どうしても気になることは直接病院へ伝えるしかなかった。
2016年7月11日(月)
早朝から痛みがあり、あまり寝られなかった様子。
妻は病院へ行き、痛みと、舌の付け根の異変を伝え、至急MRIで検査することに。
結果報告は明日。
今までの検査よりもだいぶ結果報告が早い。
恐らく院内の医師だけで確認し、各地の画像診断士による評価無しに結果を出すという事だろう。
明日の結果報告には旦那さんも来られるようにしてください。と言われたよ😄
と明るく連絡が来たが…
このとき、
妻は、とても一人では受け止めきれない、
とても辛い結果となるかもしれない事を、
一人で聞いてきていたのでした。