~漂流中~

2017年6月、舌癌になった妻(39)が亡くなった。ADHDではなくASDの息子(6)、頼りない自分(41)を残して…

■舌癌24 叶う夢 叶わぬ想い

2016年11月



小線源治療の副作用を何とか乗り切り、

ようやく食べ物も食べられるようになり、

辛い治療の合間に、

息子の保育園の運動会を見ることが出来た妻。



幾度となく辛い治療を乗り越え、

その治療の度に

あとは回復を待つばかり、と

期待に胸を膨らませること約2ヶ月。



舌の切除後も、

頚部リンパ切除後も、

放射線治療後も、

毎回、これで最後!と

不安と、恐怖とを振り払うように

大変な治療を続けてきた。



小線源治療後もまた、

これが本当の最後の望みと信じて治療に望んだ。



愛する妻の本当の命が掛かった

一か八かの掛けだった。



しかしその掛けは、

他の希望が、選択肢がある中での掛けではなく、

掛けざるを得ない状況の中で、

そうするほか命を繋ぐ方法が見出だせなかった事による掛け。



掛けなければ確実に命を奪われる。

掛けても、当たりを引かなければ命を奪われる。

当たりを引いても、生きていく力を取り戻せるか分からない。



それでも、

最愛の人が、癌という死の恐怖と対峙している事に対して、

もうやめよう…これ以上は辛いよ、苦しいよ…

と諦める事なんて出来ない。

諦め、癌の為すがままになってしまう方が

もっともっと辛いから…



そんな絶望の中でも、

みんなが諦めず、

一筋の希望、奇跡を信じて治療を続けられたのは

妻自身の揺るがぬ想いがあったから。






生きて家に帰る






この想い、この言葉だけを胸に、

癌と真正面から対峙し、

病院から出ることも出来ず、

誰に変わってもらうことも出来ず、

やり直すことも、

後戻りすることも、

諦めて楽になることも出来ず。



弱音を吐く事も無く一人戦う姿を見ていると、

2013年に放映された映画 Gravity (邦題 ゼロ・グラビティ) のサンドラ・ブロックの境遇と重なり合う部分が多く、

恐らく全ての癌患者が感じるであろう孤独感や、

救いようが無い状況から日常を取り戻すまでの

自分一人だけで戦う状況などが余りに酷似していて、

この映画を見ると、妻の闘病生活を強く思い出す

特別な映画になってしまいました。

(この作品、映像技術、音楽効果、芸術性、演技、サンドラ・ブロックジョージ・クルーニーという2大スターしか登場しないという作品の作り方まで、個人的には最高の評価をしている映画です。是非見てみて下さい。)



治療に失敗すれば、

一人宇宙空間に放り出されたかのように、

ただ恐怖と、苦しみ、痛み、

見放され、手は差し伸べられず、

いつ来るかもわからない死に至る苦痛に怯え、

絶望の闇に沈んでしまう。



そうなってしまわないよう、

常に助けの手を差し伸べ、

回復への希望、道程を示し続け、

痛み、苦痛を取り除き、

生きる希望を持ち続ける。



この当時、

私や、家族は、

妻のこの揺るがぬ想いに突き動かされていたと感じます。






2016年11月3日~5日



妻が企画した、息子の七五三イベントと、

妻両親の結婚記念日の食事会を兼ねた

二泊三日のディズニーリゾート大豪遊!



ついにこの日を迎えることが出来ました!



病院からは3泊の外泊許可を貰い、

前日夜から実家に帰って準備をします。



妻の、5年前からの、

息子が生まれた時からの夢。

七五三はディズニーで。



妻は本当にディズニー大好きでした。

多分、全ての記念日をディズニーで、

と考えていたでしょうね。




ちなみにこんなことを言ってはなんですが、

私たちの結婚式もディズニーアンバサダーホテル

挙式を行いました。



この癌闘病の時から数えて、

たったの10年前…



私は、愛する人を失いました…

この手の中で。

私が、妻の苦しみを取り除く決断をしました。

望まぬ思いだった。

しかし、それが妻の最後の願いだった…



この話は、今はやめましょう。

辛さがこみ上げる…(ノ_<。)






1日目

ディズニーランドホテル
セレブレーションダイニング&グリーティングプラン
で、ランチと共に息子の七五三を。

コンパクトな個室ダイニングルームですが、
普通のレストランからしたら
こんなに立派で素敵な個室は無いでしょうね。
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そんな、目も行き届く部屋の中に、
突然サプライズで現れるミッキー!
と、それにビビる息子(笑)
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マジでミッキーさん、どこから現れたのさ!?

食事は、見た目も味も素晴らしく、
しかも、妻の分は香辛料などを使わず、すべての食材を食べやすくカットして出してくれる徹底ぶり。
(写真は全て私のお皿を撮影したものです。)
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妻も、完食とはいきませんでしたが、
前菜も、魚も、肉も、
とても口当たり良く出来ていて、
全ての料理を1口ずつ、
半分くらいの量は食べられていました!

子供向けの料理もこんなに豪華✨
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なぜかうちの子は、
子供向けの料理よりも、
大人向けのものばかり食べたがり、
妻から沢山貰っていましたがf(^_^;



その後、しばらくプラプラ遊んで、
ディナーをアンバサダーホテルのHANAで、
妻両親の結婚記念を兼ねて。

またもや豪華な食事(*´ω`*)
自分たちのメインは写真撮ってませんでした。
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結婚記念の御両親には、
特別なサプライズケーキ🎂
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もう食べられなーい💦



宿泊は私たち家族3人と、妻両親2人の、計5人。

ファミリールームで団欒のひとときを過ごします。






2日目

ランドパークイン。
車椅子でレッツゴー!
妻の体力が許す限り朝から夜まで遊び尽くします!
乗り物はもちろんゲストアシスタントパスで!

写真はいくらかありましたが、
載せにくいものばかりなのでご割愛。

朝から夜まで、
久しぶりにヘトヘトになるまで遊びきり、
夜は早々に就寝。

みんなの笑顔が溢れた本当に幸せな1日!






3日目

体力に余裕があればシーパークイン。
の予定でしたが、
体力的にもそこまで余裕がなく、

昼過ぎにお宮参りも予定しているため、
ランドホテル宿泊者向けの中庭に出て、
綺麗な庭園でゆったりとした時間を。

息子は、迷路のような水路と花壇と、
噴水があるだけで、結構はしゃいで楽しんでいました。
みんなで、お母さんも一緒に遊びに行けたのが
本当に嬉しくて、興奮してたんでしょうね。



昼過ぎに妻実家へ帰り、お宮参り。

元々の予定では、
後日お宮参り、写真撮影だったんですが、
妻の外出、外泊許可も体調により取れないこともあり、
この旅行の数日後には次の手術も控えているため、
ここでお宮参りも行っておく事に。



昼過ぎには妻実家に帰り、お宮参りを済ませます。



3日目ともなると、
さすがに妻も疲れが出てきたのか、
気力で保っていた所もあったのでしょう。

せっかくのお休みなのに、
お宮参り等で遊べない息子もコントロールが効かず、
それに対して妻もイライラしてしまい、
気持ちも穏やかではいられない場面もありました。



それに対して息子が放った言葉



お母さんなんていなくなっちゃえ!



障害を抱えた、まだ年齢的にも抑えが効かない息子の

衝動的な一言。



妻は、間髪いれず息子の頭をバシンッ!と叩き、

目に涙を浮かべます。



義母から

「もう、やめなさいよ!」

「"息子"も、そういう事言わないんだよって言ったでしょ」

と声が飛びます。



私は妻に寄り添い、

何も言えずに、ただ背中をさすり続けます…



それぞれの立場の、

それぞれの気持ち。



全員が感じている深い悲しみ…



全員が、今は叶わぬ想いに胸を痛めている。



これが先の見えない癌治療の現実なんです。



妻の夢だったこの3日間のイベント、

出来ることなら笑顔で終わらせてあげたかった。






そして、

突き付けられているもうひとつの現実。



この3日間の間に、よりはっきりとしてきてしまった

先日から気になり始めた顎下の変色部。



固くつっぱり、

中央にはしこりのような塊が見えている状態に。



考えたくはないが、これは癌の再発ではないのか…



首の皮が張ってしまい、

正面を向くのも少し苦労するらしく、

3日間、妻は常に首を右下に傾けていた。



首、肩のコリ、張りも酷く、

弱いマッサージをしたが、

揉みっ返しになってしまった。



顎の皮膚の異常、一度は先生に相談した。

何か調べる方法は無いのか?

今度の手術の時に、麻酔が効いている間に

何か出来ることは無いのか?

何か、手立ては無いの?



治せる方法があるならもうやっているよ…



先生達だってそんな思いでいる事はわかっています。

わかってるんです…

それでも、

世界で一番その人の事を治してあげたい、助けてあげたい人は、

立ち止まろうとする人を、

歩みを止めようとする人を、

許せない。

認められない。



"大丈夫" なんて言葉に何の意味も無い。



大丈夫に向かっていく道筋、

次の目標が見えていて、

それに向かって頑張っている、

成果が出ている、



だから大丈夫。



そうでなければ "大丈夫" は認められない。



この時、初めて

私は、自分の口から



大丈夫



が言えなくなってしまった事に気付きます…



妻の顎に姿を表した、

皮膚が渦を巻くようにシワが寄り、歪み、

どす黒く変色した渦の中心に、

癌を宿した、小さな卵のような膨らみを見たとき、

それの対処法を主治医が何も答えてくれなかったとき…



私は、



大丈夫



を失いました。






病院へと妻を送る車の中。

何も言わずに助手席に座る妻に、

この日あった、息子とのトラブルについて

一方的に話しながら、

そのまま病院に到着し、

病室へ妻を送っていきます。



大丈夫。

きっと大丈夫。



今思えば、

妻は言って欲しかったのかもしれません。

根拠なんて無くとも、

たとえ嘘でも、

近くで、笑いながら



大丈夫だよ(*^_^*)






私は、

妻の願いを叶えてあげられなかったのかもしれません。