~漂流中~

2017年6月、舌癌になった妻(39)が亡くなった。ADHDではなくASDの息子(6)、頼りない自分(41)を残して…

■舌癌23 When you wish upon a star

2016年10月14日



小線源治療の後、

非常に重い副作用に悩まされ、

入院による管理で体力の回復と、

放射線副作用からの回復を待った約1ヶ月半。



ようやく味覚障害も落ち着き、

息子の運動会へ行くんだ!

と、1泊の外泊許可を取って

約1年振りに我が家に帰ってきた!



こんな辛い治療の最中でも妻は

食材の買い出しを両親に手伝って貰いながら

私と息子の食事を作り、

運動会後のお弁当を作り、

家族に笑顔を振り撒く(*^_^*)



いつかこんな日が来てくれる。

今の辛い治療を乗り越えれば、

また家族一緒に、同じ天井を見て寝られる。



この調子で、

癌も、副作用も、すべて乗り越えていく!

みんなの笑顔と共に、

そんな想いが駆け巡った幸せな1日だった。






2016年10月15日



息子の保育園の運動会。



よく晴れた、秋晴れというよりは

夏のような日差しの1日。

大きな帽子を深く被り、

首の手術痕を日焼けしないようストールを巻き

ご両親に日傘をさして貰いながら車イスに乗る妻を

息子と一緒に押しながら

運動会会場まで歩いていきます。



息子は、お母さんお母さん、と

と甘える訳でもなく、

僕が車イス押すんだ!

と男の子らしい姿を見せます。

危ないので、一緒に手を添えて行きましたがf(^_^;



運動会での息子は、

いつものごとく落ち着かない様子で

足元の砂を弄り続けていましたが、

度々お母さんの方を向いては、

回りを気にせず



おかーさーん!



と呼び掛け、手を振ってきます。

妻もそれに応え、小さく手を振って返します。



妻は、日差しを暑そうにし、喉も乾きますが、

飲み物も普通には飲めず、

小さなコップに少量だけ入れて

とろみ剤を混ぜて少しゼリー状にした麦茶を

少しずつ飲みます。



ただでさえ消耗している体には、

外に少し出ているだけでも辛く、

息子の競技が終わる度に

後ろの方の大きな日陰に

両親と共に移動し、体を休めます。



元気な頃の妻であれば、

一眼レフカメラの愛機

PENTAX K-x
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を構え、半日で数百枚の写真を

取りまわっていたでしょう。



しかし、1時間程日の光を浴びた妻には

もう、その愛機に触れる気力も無く、

少し元気を取り戻したとはいえ、

外の空気、日差しに晒されている妻が

苦しそうに見えます。



また来年は運動会に来れるだろうか。



保育園最後の運動会は、

卒園式は、

小学校の入学式は出られるだろうか…



妻の姿を見ているとそんな思いに駆られます。

ここにいてくれる嬉しさとは裏腹に、

気持ちは沈んでいきそうになりますが、

息子の普段通りのはちゃめちゃ行動が

みんなを笑顔にしてくれます。



大変な治療の合間を縫って、

息子の運動会を見に行けた!

息子の成長をその目で見ることが出来た!

と、妻は喜んでいましたが…



妻の体調は、

味覚障害が良くなってきた事とは裏腹に、

想像以上に体力を失っており、

外の空気に耐えられる程の元気は

まだ取り戻せていないように感じます。



保育園の運動会は午前中いっぱいなので、

終わり次第、早々に家に帰り、

家でお弁当タイム。



コレ
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息子大喜びヾ(@゜▽゜@)ノカワイイ!💕

卵で出来た大きいピヨピヨを顔から食ってました(笑)



そして、

遊びたい遊びたい!

とせがむ息子を必死でなだめ、

妻をまた病院に送っていきました。



久しぶりに会えて嬉しい気持ちの息子に、

お母さんは病院に戻らないといけないんだ
と、ただでさえ聞き分けが難しい息子に言い聞かせるとき、

そして、
本当は病院なんかに帰りたくない、息子と家族と一緒にいたい
と思う妻を、病院に戻さなければならないとき、

それを無言で受け入れるしかない妻を見たとき…

自分を含め、すべての人たちの想いとは逆のことをしなければならない。

みんなが一番悲しむ方を選ばなければならない。

まだ妻が一時退院や、外泊許可がとれたこの頃は、
これが一番辛かったです。






10月21日



外泊許可から病院に戻って数日。

調子は悪くないようだが、
痛み止の薬の強さはどんどん上がっている様子。

これは大丈夫なの?



先日妻が気にした左耳下の腫れ、というか、
固いしこりが少し大きくなってきたらしい…。

先生からは、リンパじゃない可能性もあると言われ、その検査のためにMRIを撮っていたらしい。



まさか…

耳下線癌?
耳下の唾液線癌?

転移の可能性も、
放射線による二次的な癌発生の可能性も…

それ以外にこんなしこりが出来る症状があるんだろうか?

リンパの腫れなら、小線源後の腫れ
ということもあり得るが…



せっかく良くなってきた所でまた再発、転移なんて、絶対にあってほしくない!

なんでこうも、
大きな治療をしてからの約2ヶ月の治癒期間が終わる前に、次の問題が発生するのか。

食事も出来るようになってきて、
退院の目処も出てきた!
って喜んだばかりなのに!!

これ以上、妻に辛い思いはして欲しくないよ!
(ノ_<。)



この頃からだったと思います。

妻が、病状について色々を言わなくなり、

そういう話を避けるような感じがし始めたのは…






10月25日



東京医科歯科大学病院で2回目の術後検診。

Y先生に頑張っている姿を見せに行きます。



口腔内は今まで通り経過観察だが、
まだ舌の奥の方には針を刺したところの炎症、
口内炎が残っているとのこと。

ただ、口腔内の経過は概ね良好で、
今までどおり口内を綺麗に保ってください。

口腔底の穴は広がってきているが、
元々、癌が広がっていた範囲であり、
癌を倒すことで、穴が拡大する事は想定の範囲。

癌が駆逐出来ていれば、
一時的に壊死等が拡大しても、
再建等でどうにかする術はある。

とにかく今は再発転移が無いよう
経過を注視するしかない。

そういう意味で、左頚部の腫れは気になります。
これはすぐに主治医に確認して下さい、と。

次回の検診は1か月後。



味覚障害は収まり、少し食べられるようになってきた妻ですが、量が食べられず、体力が落ち気味。

半日の外出でしたが、疲れきってしまい早く入院先の病院に戻ります。






10月26日



その翌日、

舌切除部と、左頚部のしこりから生検を行います。

結果は来週。



11月2日~5日の間、

息子が生まれた時から計画していた、

ディズニーでの七五三セレブレーションと、

2泊3日のディズニーリゾート堪能のイベント。



妻が半年前に、これを目標に癌を治そうと

治療の目標にもしていた一大企画。



生検結果に問題がなければ、

治療の経過も、

ディズニーイベントの夢が叶う事も、

こんなに嬉しいことはない。



生検結果に問題がなければ…



今はイベントよりも、そちらの方が気になって

気持ちの整理がつかない。



体調は良くなっている。

体力は落ちてしまい、

少し元気が続かなくなってしまったが、

癌が体を蝕んでいるあの時とはだいぶ違う。



癌は出てほしくない。

ただ、もし癌じゃなかったとして、

頚部のしこりが何なのか

原因がはっきりしなければ、

生検結果を疑う事にもなりかねない。

そもそも、一番初めの舌の生検だって、

癌は出ていなかったが、

切ってみれば悪性度は相当に悪い癌だった。



妻の夢を叶えてやりたい。

結果がどうであれ、

次の目標に向かっていく元気を取り戻すために。



ディズニー好きな妻が5年前から

本気で計画していた夢を。



一生のお願い…



子供の頃、毎日のように使っていたこの言葉。

今、改めてこの言葉の本当の意味を知る。



しかし、

本当にこれが最後になってしまわないか、

この言葉を、

この想いを胸に抱くだけでも、

強い罪悪感のようなものに潰されそうになる。



毎日、毎日、

病院からの帰り、

町の光が消え始める頃、

空を見上げて、

星に願いを…



お願いします。

妻を助けてください…

妻の願いを叶えてください…






10月31日



自分が風邪をひいてしまって

暫く妻に会えていない。



今はとにかく七五三のイベントを無事に、

楽しく終わらせる事にみんなが集中しているので、

自分も妻に風邪を移さないよう全力で体調整え中。



ただ少し気になることが。



病状について、あまり何も言わなくなった妻から、

今日は舌が腫れてて痛い。動きも悪い。

と…



2日前、自分が風邪をひいている間に

実家に外泊していたらしく、

そのときの食事が一時的な悪化の原因なのか、

そうではないのか…



舌と頚部の生検結果は明後日。

なにも出ないこと、

七五三イベントの間、

体調良くいられることを

願い、祈り続けるしかない。



最近思うこととして、

癌治療と闘病期間の長さ、

何も出来ずにただ経過をみる事しか

出来ない期間の長さは、

患者本人にも、家族親族にも、

余りに大きく、長く、

絶対的な悪意と無力感をもってのし掛かってくる。



この期間が本人の生きる気力を削ぎ、

家族の心配の限界を越え、

諦めや、何をしても結果は同じ、

という気持ちの限界を生み出していると感じる。



そうならないように頑張ろう、

治療が上手く行くことを祈ろう、

なんとかする方法を常に見つけ、考え、

出来ないことばかりでもいいから、

そのなかにたった1つのアイデアでもないかと

探し、先生に相談し続けよう…

そんな前向きな当たり前の気持ちすら、

もうそういうのは

プレッシャーやストレスになるからやめよう、

という言葉を、

この頃、何度となく言われているのは事実。



人それぞれのアプローチの仕方の話だと思うので、

思いが違うのは仕方がない事だが、

揺るぎ無い1つの思いは、

決して妻に辛い思いをして欲しくない。

なんとかして癌を克服してほしい。

治る方法を1つでも多く見つけてやりたい。

生半可な、人任せな気持ちでは

癌には勝てない…



心から看病していても、

癌は自然とは消えてくれない。

ただ願うだけでは、

癌は治ってくれない。



にこにこ過ごしているだけでは

癌には勝てない!



この頃、

そういう思いに駆られていたのは

自分だけだったかもしれない。






11月1日



検査結果。



左頚部リンパに転移あり。



舌部には再発所見無し。



その他頭頚部への明らかな再発、転移無し。



胸部レントゲンでも所見無し。



右顎下の皮膚に黒ずんだ場所が出来てきている。



口腔内のえぐれた穴の部分の外側の所だ。



触ると痛みあり。



口腔底貫通を伴う放射線性細胞壊死の可能性あり。



血液検査上の異常は無し。



七五三予定日への制限無し。



11月9日左頚部隔清手術を行う。



前回行った右頚部リンパ郭清手術と



同等の手術だが、範囲はやや狭い想定。



注意点も前回同様だが、



両頚部リンパ、血管の切除を伴うため、



顔全体と頚が腫れる可能性があり、



飲み込み、呼吸が困難になることを想定して、



経管挿入、気管切開の可能性が高い。



放射線治療は実施しない。



前回治療で既に当たってる所のため。



施術時間は3時間予定。







やはり転移していた…

舌、口腔内に再発していないことは

せめてもの救いだが、

また反対側の頚部を切ることになるとは…



顎の黒ずみは一体…

指先大くらいの黒い染みのようなもの。

悪いことを考えればきりがないが、

どう考えても良い経過だとは思えない。

しかし、

今回の生検を行った時点ではこの黒ずみはなく、

現時点では何の判断も出来ていない。



ここにきて、次から次へと気になる症状が出てきている。

これからどういう対応が必要なのか、

癌なのか、放射線副作用なのか、

すぐにでも、切ってでも調べるべきか、

暫く様子を見るべきか…

もうわからない。



最短の、最善の対応を信じて、

主治医を信じて、

手術が成功して、

悪いものが今度こそ取り除けて、

無事でいてくれる事を祈るしかない(ノ_<。)



ディズニーの七五三イベント、

行っていて平気なんだろうか…



しかし、これは妻の一番の願い。

もし行けるのであれば全力で楽しもう…!

やってあげられることは、

少しでも楽しい時間を過ごして貰うこと。

それしかない!



転移、手術とはいえ、

数ある診断結果の中でも

良い方の結果だったと信じて、

次取ればもう終わり!と信じよう!



そう思わない限り、

もうだめだ…

という思いに潰されてしまいそうになる。






11月2日



顎の黒ずみ、

主治医のH先生の診断では、

癌が壊死した事による空洞化と、

放射線副作用により、

皮膚に穴が開く前兆かもしれないと言っていた。



もしそうだった場合、

穴が空いてしまう前には、内部に膿が溜まり、

痛み、腫れを伴う症状が出てくる。



もしその中に癌が検出されなければ、

膿を出し、

穴が空いてしまった場所を洗い、

清潔を保ちながら、

回復を待つしかない…らしい。



時間が掛かるかもしれないが、

治癒するかどうか経過を見るしか

出来ることは他には無いという。



そのまま1年経過後、

再発がなく、しかし穴が塞がらない時は、

遊離皮弁で再建を検討出来る。



しかし、 



もしそこに癌が再発していたら、

主治医から伝えられていた

下顎を骨ごと切り、

遊茎皮弁による再建手術が必要だという…



転移が見つかった左頚部の

リンパ切除手術は11月9日に予定。



東京医科歯科大学病院のY先生の次の診察は

11月22日の予定。



9日よりも前にY先生の診察を受けるべきか、

それとも主治医のH先生に

急性顎骨壊死の可能性を相談してみるべきか…



いずれにしても、

この口腔内と、顎とが貫通して

穴になってしまいそうな顎下の状態、

顎骨壊死

放射線性細胞壊死

癌転移、再発…

いずれの状況であっても、

厳しい病状変化が待っているかもしれない…






そんな中でも、ただ1つ嬉しいことが。



血液検査の結果、

また、全体的な体調が良好なことで、

11月3日~5日の
ディズニー七五三セレブレーションは

行っても良いとの判断!



妻の顔に満面の笑み(*^_^*)



明日から2泊3日で、

ディズニーランドホテル宿泊の、

七五三セレブレーションパーティと、

妻両親のご結婚記念日と、

2日間のランド、シー、満喫の旅!



どんなに大変でも、

辛い状況でも、

好きなことに全力で、

いつもポジティブで、

ディズニー大好きな妻にとって

これほど心強いプレゼントはないでしょう!



すべての辛さを忘れ、

一生に一度きりの願いを、

夢のひとときを、

最高の時間に出来ますように…