~漂流中~

2017年6月、舌癌になった妻(39)が亡くなった。ADHDの息子(6)、頼りない自分(41)を残して…

■舌癌17 緩和ケア入院の開始

2016年7月14日(木)



癌発覚からおよそ10ヶ月。

続いてきた大変な治療も一段落し、

これから復帰のための生活を始めようとした矢先、

今までの痛み止めでは対処がしきれない状態となってしまった妻。

いよいよ主治医から、緩和ケアのための入院を勧められます。



また、単なる緩和ケアのための入院だけでなく、次の治療をどうするか、それを決めるための期間でもありました。



緩和ケアとは?



この言葉を聞くだけでも嫌な気分になる方も、なかにはいらっしゃるでしょう。

病気や、治療に耐えられず、治る見込みがないと判断されたときに開始されてしまう医療行為…

そんなイメージばかりが先行しているのが実情のような気がします。

緩和ケア病棟、なんて言われる施設があるのもその原因のひとつだと思います。

緩和ケア自体は、別にそのような場所に入らなくても、癌治療等を行っている一般的な大学病院や、癌専門の医療機関であればどこでも行っている医療行為であり、決して、死を待つまでの快適な暮らしを…といったネガティブな医療行為ではありません。



緩和ケアの主な目的は、

癌を代表とする、耐えがたい痛み、苦痛を伴う難治性の病気、怪我などに見舞われた患者の、痛み、苦痛を可能な限り和らげ、または取り除く事を目的として行われるものです。



しかし、目的の最終地点としては、

痛み、苦痛を取り除く事により、肉体的にも、精神的にも、可能な限り落ち着いた状態を維持出来るようにする事で、より適切な治療を受けられるようにし、QOL(Quality of Life:生活の質) を高められるようにする事が目的とされています。



結果として、

根治出来たり、
良く延命出来たり、
好きな事をしながら生活を送れたり、
辛くない余生を送ったり…

結果は "病状により" 様々ですが、

その間に、苦しむだけで時間が過ぎていく事や、
食べたいのに食べられない、
やりたいのにやれない、
治療を続けたいのに体全体の状態が悪くて治療を続けられない、

など、
いわゆる生活の質 QOL が下がり、

生きている価値がない、
希望が持てない、

といった状態になってしまわない為に行う医療行為だと理解した方が良いと思います。



そして、緩和ケア入院とは。

痛みや苦痛、そして、
薬による副作用(特に急性期副作用)に対して、
より適切な薬の量、種類等を確認し、
安定した状態を作るための期間として
行われる入院です。

一言に緩和ケアと言っても、
人により、病状により、
効く薬の種類、
量、
タイミング、
組み合わせ、
副作用、
すべて違います。

ただ、麻薬系の鎮痛剤を使えば痛みは取れる
なんて乱暴、かつ、楽なものではありません。

逆に効きすぎて、生活が出来ないレベルまで意識が低下してしまうような事さえあります。

そういった問題に対処し、
初期の副作用が発現し、それが落ち着き、
その人に合った安定した薬の投与が確定するまで、
最低でも1~2週間程度は掛かります。

そのための、薬の投与方法のプランニング期間が緩和ケア入院の目的です。



勘違いしないようにしたいのは、

緩和ケア入院なんてしたら、薬漬けにされて逆に殺されちゃう!

なんて安易な考えを持ってしまわないこと。

今よりももっと良い治療を受けられるようにするため。
生きていること自体が苦痛になり、希望を持てなくならないようにするため。

そういう生活、治療をするための基盤作りのために、

患者と、家族と、医師とでプランニングしていく事が大切なのです。

そういう取り組みに対して、緩和ケアという名前が付いただけであって、決して麻薬漬けにされて、訳も分からなくされてしまうなんて思わないで下さいね。






【ご注意】

以下で紹介する薬、量、摂取タイミング、組み合わせ、副作用等は、すべて妻の2016年7月時点での病状にあわせたプランです。

同等の症状でお困りの方であっても、ネットにこんな情報があったと医療機関に相談したり、どちらが正しいのかと確認されることの無いようお願いします。

緩和ケアは常に患者様自身の状態に応じて医療機関にて計画されるものです。ネットの情報は参考、予備知識程度と考え、この情報が正しい、間違っている、といった判断材料とされないようお願い致します。






改めて、2016年7月14日



緩和ケア入院の開始。

まず処方されたのは痛み止めの オキノーム。



オキノーム散
https://www.qlife.jp/meds/rx18285.html



最もお世話になった痛み止めです。

痛みの度合いに応じて成分量は変わりますが、非常に即効性があり、強い痛みでも消し去ってくれるほど強力な効き目があったようです。
(痛みの強さに応じて、成分量は増えていきましたが…)

また、一般的な投薬間隔は6時間ごとと決まりがあるようですが、

痛みがある場合に限り、1時間あければ何度飲んでも構わないと言われていました。

主な副作用は、吐き気・眠気・便秘。

使い始めた1日目は、強烈な眠気以外の副作用はなかったとのこと。

暫くこれで痛みのコントロールを続け、適切な量を決めていきます。






2016年7月16日



生検の結果が出た。

やはり舌癌の再発。

小線源治療をやる方向で話を進めてもらう。



オキノームの副作用がまあまあ強く、
飲むと15分以内に強烈な眠気。

薬を飲んで、暫く話でもしながら待っていると、突然意識を失うように、ベッドの上に座ったまま寝てしまう。

食事の前に薬を出して貰い、薬を飲んで痛みが消えたところで食事を食べようとする頃に眠気が来るため、
この頃は食事が出てきてから30分くらい先に寝てしまい、その後起きて食事をする。という具合に。



この日、
昔からスノーボードによく行っていた知り合いがお見舞いに来てくれた。



ヨーグルトをたくさんいただいたよ( ´艸`*)

その中のひとつに、
見たことのない、高級そうな飲むヨーグルト♪



あってるかどうかわかりませんが…
記憶の限りでは↓のヨーグルトだったはず。
四角い形で、白い箱入りだったヨーグルトなんてこれくらいしか見つからない。



プロテオグリカン入りヨーグルト
http://sakurabeautiful.com/?p=13479



口の中の痛み等で、食べられるものが限られることを伝えていたので、色々考え気遣って頂けたんだと思います。

本当にありがとうみんな(ノ_・。)






2016年7月17日



今朝は体重測定があった。

41.4kg。

入院時の体重と変わりなし。

けっこう食べてるんだけどなぁ…。



一時期は、痛みで何も食べられない状態だったが、オキノームを飲み始めてからは結構普通の食事が出来ていた。

ここ数ヵ月の食事量からすれば確かに多いが、
さすがに太れる量では無かったかな。



そして、痛み止めが一部変更に。

1日4回のトラマールから、

1日2回のオキシコンチンに。



オキシコンチン
https://www.qlife.jp/meds/rx18279.html



オキシコンチンは、即効性はオキノームに劣るものの、効果がゆっくりと半日くらいは続く痛み止め。

オキノームだけだと、痛みと、無痛との波が大きく、頻繁に痛みが再発してその度にまたオキノームを飲み、眠気に襲われるため、

一日中、痛みと眠気と追いかけっこをしているような感じであった。

これをオキシコンチンで大きな緩やかな波に変えていきつつ、強い痛みが出る前にオキノームで抑えよう、という感じか。





2016年7月19日



朝起きたとき、痛みが一段とヒドい。

起きてすぐ(6:00頃)ロキソニンを飲む。

7:00にオキシコンチン、7:30にオキノーム。



この頃から、オキノームの強烈な眠気が無くなってきた。

麻薬系の痛み止めは、短期的な副作用が強く出る傾向があるが、暫く続ける事で体が慣れ、消えていくらしい。



強烈な眠気はないものの、常にふんわり眠いようで

午前中は寝て過ごすことが多かった。



夕方、CT検査があった。

遠隔転移の有無を調べるためだったようだ。






2016年7月20日



朝の診察の時に、昨日のCT検査の結果報告。

遠隔転移ナシ!(≧∇≦*)

小線源治療への道、第一歩前進♪






2016年7月22日



息子の保育園での個人面談のため、保育園まで外出。

外出届を出し、妻は両親の車で保育園へ。

自分は会社を午後半休して、保育園で妻と合流する。

が、妻の調子が悪そう…

どうやら、来る途中の車の中で車酔いしてリバースしたらしい。

お昼ご飯せっかく完食したのに…と悔しがる。

保育園の面談では頑張って話を聞いていたが、眠気に勝てず。

頑張ってしまう性格のため、調子が悪いのか眠いのかわからず、途中でトイレに行くも帰ってこず、心配になって保育園の先生に見に行って貰う一幕も。
妻はトイレで寝ていたらしい。

痛み止めにより、痛みに苦しむ事は少なくなったが、起きて活動するということが難しいくらいの副作用が続く。

これら副作用と、痛みと、活動のバランスを取るのが難しいのだ。






2016年7月23日



昨日の保育園外出が思った以上に疲れたらしく、ほぼ1日寝て過ごした。

オキシコンチンの副作用(吐き気)がだいぶ出てきているっぽい。

吐き気止めを予防的に飲んでおき、少ない水で薬を飲めばだいぶ収まるみたいだ。








2016年7月25日



この日は、

顎の切除を伴わない治療法として
受けられることを期待している、
小線源治療を行っている東京医科歯科大学病院へ。

小線源治療の可能性を聞きに、
放射線科のY先生を訪ねます。



が、

この話は次回に詳しくお話をします。



とりあえず、小線源治療について話を聞きました。



ここでも色々な事がありましたが、
納得するまで話をし、
今日はいったん元の病院に戻り、
緩和ケア入院を継続します。






2016年7月26日



あまり眠れず、夜中に何度か目が覚めた。

眠剤もらえば良かったなぁ。

明日はいちばんつきあいの長い親友がお見舞いに来てくれるので楽しみ♪






2016年7月27日



朝ご飯食べたらリバース(;´Д`)!

食事の後に吐いたのははじめて。

最近、胸のモヤモヤがヒドくて、食べるたびにモヤモヤしてたけど…



吐き気を押さえる薬を
強いものに変えてくれるみたい。

これで少しはおさまって、
食べられるようになるといいなぁ…

ナウゼリン坐薬という吐き気止めに変えてもらって1時間後、だいぶ吐き気がとれてきた。



夕方、一番の親友がお見舞いに来てくれた!

親友のお母さんからもお見舞いの品をいただいたよ!

みんなが応援してくれてて、見守ってくれてるんだから、絶対負けるわけにいかないんだ!






2016年7月28日



お母さんが漢方薬をお茶にして持ってきてくれた。

漢方屋さんへ行って、
私に合うように調合してもらったんだって♪

今の症状と、これからやる予定の抗がん剤での副作用を考慮して作ってくれたもの。

味は、甘めでとても飲みやすい。



薬剤師の先生方が言ってたんだけど、
飲みやすい漢方はその人に合ってるんだって。






2016年7月29日



朝、体重測定したら39.8kgだった。

わ~!

ついに夢の30kg台に突入しちゃったよ!



東京医科歯科大学付属病院への転院日が
8/1(月)に決まった。

の~びり過ごそ~っと☆






2016年7月30日



ぜんぜんお腹がへらない!

そりゃそうさ。

午前中はダラダラ寝てばかり。

午後も動かずベッドの上。

それでも午後はストレッチしてるんだけどな。



お昼と夕方2回、嘔吐。

薬を飲むときの大量の水が原因っぽい。

水はチョビチョビ飲むなら大丈夫なんだけど、

一気に飲むと嘔吐反応が…。



今日は隅田川の花火大会だったのね。

入院してる部屋から、小さくだけど花火が見えた。



この花火は二人で病室から見ました。

この緩和ケア入院の頃から、土日含めると週に4日くらいはお見舞いに来ており、

一緒に夕飯を食べたり、

院内を一緒に歩いたり、

ただ一緒にいたり、

調子が良かったり、悪かったりしていたので、

無理をさせず、リラックス出来るように過ごしていました。



自分も以前、怪我で1週間ほど入院したことがありました。

とても辺鄙な所の病院だったのですが、
その時に、まだ付き合っていた頃の妻が2日に1回お見舞いに来てくれた事が物凄く嬉しくて、
病院に一人でいる時間って、

たった1時間でも物凄く長いなぁ…

なには無くとも、誰かが来てくれるだけで本当に嬉しいし、気持ちが楽になる。

と感じた事がありました。

たった1週間でもそんな気持ちになります。



そう思うと、

自分がお見舞いに行っても病気の状態が変わる訳じゃないし、病院にいるんだから、何かあっても一番安全な場所だし、大丈夫だよね…

なんて思うことは到底出来ず、

お見舞い時間終了10分前に着く事が分かっていても、

顔を見てすぐ帰る、という事が分かっていても、

それだけで気持ちは全然違う。

そういう想いを持っていつもお見舞いに行ってました。

実際、

プリン買ってきたよ!
じゃあねーッ! ヾ(@゜▽゜@)ノ

なんて事もよくありました(笑)






2016年7月31日



夜中の2時と5時に痛くて目が覚めた。

痛み止めをもらってなんとか寝られたけど

しっかり寝た気がしないなぁ。





ここまでの、

7月14日~7月31日の経過が、妻の緩和ケア入院の状況です。

結果的に、痛みと副作用の十分なコントロールとまではいきませんでしたが、

急性期の吐き気や、意識の低下、うとうと、ぼんやりなどの副作用も、どうすれば楽になるか本人なりにコツを掴み、

痛みも朝方薬が切れてくるタイミング以外はコントロール出来て、薬の量も決まり、安定した感じとなりました。



痛みをずっと我慢していた妻は、

うなだれ、元気がなく、何も喋ることも出来ず、食事も出来ずにいましたが、

痛みや、吐き気のコントロールが出来るようになってくると、食べる楽しみが戻り、一緒に夕飯やスイーツを食べながら話をする事も出来るようになりました。



私の気持ち的にも、



大丈夫かな…(ノ_・。)



という思いから、



楽しめる事は楽しみながら、治療頑張ろうぜ!



という思いに変わり、

心に余裕と、希望が沸いた事を記憶しています。



妻本人は、当然苦痛が減った事で相当楽になったでしょう。
食事も出来るようになり、笑顔が戻りました。

私としても、
妻の苦痛に耐えている事に対して、自分は何も助けてやれない、という思いが消えたことが何よりも前向きになれたと思います。

緩和ケアの効果ですね。



こうして、約半月の緩和ケア入院を経て、

いよいよ、命を繋ぐ最後の望み。

小線源治療のために、東京医科歯科大学付属病院へ転入院することになります。